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貴方.
佐「……なんかそれは申し訳ないことしたな、ごめんな」
『いやいや、何で佐野くんが謝るんよ！これは私の心の問題やから』
佐「でもなあ……俺らが開かんでいい扉開いてもうた感あるやろ？」
あの日、逃げるように帰ってしまった私を心配してくれた佐野くんは、小島くん伝いに連絡をくれて、そのまま定期的にメッセージを送り合う仲になった。
何となく距離が縮まって、佐野くんにやったら話してもええかなあ。そう思うようになってから、2人でお茶をする約束をした。夜ご飯でも良いかなあと思ってたけど、佐野くんはお酒が苦手らしいから、お仕事の合間にカフェで待ち合わせ。
『ごめんね、この後お仕事あるのに』
佐「いやいや、そんなん気にせんでええよ。ラジオやし、好きにやらせてもらってるから」
『そっかあ、』
佐「因みに誠也くんと2人やで、今日は」
『……家帰ったら聞きます』
佐「無理して聞かんでええから！」
佐野くんは、「Aちゃんがしたいようにしたらええって」と優しく笑ってくれた。
それはラジオのことなのか、はたまたこれからのことなのか。どっちとも取れるような発言に、重たくなっていた心が救われたような気がする。気のせいかもやけど。
佐「まあ、完全に部外者目線から言うと、ほんまに何でくっつかんねん、とは思うけど。Aちゃん的にはどうなん？誠也くんのこと」
『どうって……好きとか、嫌いとかってことやんな？』
佐「うん、嫌いなわけないと思うけど」
『……それは、好きに決まってる』
佐「よなあ。誠也くんもやし、どうしたらええんやろ」
かと言って、付き合うかと言われたらそれはまた違う話やと思う。
せーちゃんは、もう皆のものやし。今までも、そしてこれから何十年も変わらず皆の末澤誠也でいなきゃいけない。もしもの話とは言え、私が彼を独り占めする未来なんて想像できなかった。
佐「大人って面倒くさいよなあ。ただ好きやからってだけじゃ、死ぬまで一緒におられへんもん」
『……ね、いつからこんなややこしくなってもうたんやろ』
佐「全部捨てられたらええんやけどなあ、そうもいかんか」
男の子やし、多分私よりはドライな考え方のはずやのに。
佐野くんは私に寄り添おうとしてくれていて、その気持ちが伝わってくるからこそ、今この場で明確な答えが見つからなくても、どこか心が満たされるようだった。
やっぱり、せーちゃんの仲間は皆ええ人。
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作者名：流星
| 作者ホームページ：https://twitter.com/sst__05
作成日時：2023年5月16日 0時
