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貴方.
『……いやいや、逆にどうなりたいねん』
とりあえずほんまにトイレに行って、適当に時間を潰した。あまりにも遅くなったら変やから、そのまませーちゃんの部屋に戻る。
小島くんと佐野くんに迷惑かけてもあれやし、そろそろ家帰ろっかなあ。そんなことを考えながらドアの前までやって来たけれど、不意に向こう側から私の名前が聞こえて、慌てて体を止めた。
佐「いやあ、それにしたってほんまにええ子ですね。Aちゃん」
小「やろ？ノリもええし、誠也くんの幼馴染みやから色々理解あるしな。晶哉めっちゃタイプなんちゃん？」
佐「誠也くんの幼馴染みちゃうかったらね。怖すぎやもん、幼馴染みこれって」
末「どういう意味やねん」
小「まあそのまんまの意味でしょ、誠也くんがAちゃん離れ出来てなさすぎ」
末「……そう見える？」
一呼吸置いてそう呟いたせーちゃんの声は、なぜかいつもより真剣さを帯びているように聞こえて。
気のせいやと思うようにして、不思議と震え始める手を、同じように震えるもう片方の手で握り締めた。よく分からない不安を鎮めるために、呼吸を整えるように。
小「Aちゃんも大学卒業したら、色んな男と出会うんやから。いつまでも番犬しててもAちゃんのためにならんって」
末「……変な男に引っかかりそうやん、あいつ。純粋やし」
小「誠也くんがそう思ってるだけちゃう？彼氏はおったことあるんやろ？」
末「まあ、」
佐「そういうときは見守るんですか？」
末「……そりゃあな」
お互いに恋人がいた時期だって普通にある。そういうときは暗黙の了解で、会う頻度が減ったり……それくらいはあったけれど、でも、気付けばいつも通り2人一緒に過ごしていた。
せーちゃんがいる毎日は、私にとって居心地が良すぎる。幼馴染み離れができていないのは、私の方なのに。
末「大切やから、それは彼氏がおっても変わらん」
佐「……でも、ほんまにそう思えます？」
末「ん？」
佐「Aちゃんが、誠也くん以外の人の隣で幸せになるん、ほんまに見守れる？」
『……』
佐野くんの言葉は、他のどんなそれよりも私の心に深く響いた。
せーちゃん以外の人と毎日一緒に過ごして、笑って泣いて、所謂��病める日も健やかなる日も��添い遂げる、ということ。なぜか上手くイメージできなくて、息が詰まりそうで。
私は、逃げるようにその場を離れた。
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作者名：流星
| 作者ホームページ：https://twitter.com/sst__05
作成日時：2023年5月16日 0時
