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貴方.
『ドームかあ……すっごいなあ、せーちゃん』
「おばちゃんと見に来てな。うちのおかんも来るから」
『そうなん！？せーちゃんママもおるんかあ、嬉しいなあ』
「あと今日はおとんもおるから、Aが案内したってな」
『末澤家勢揃いやん、めずらし！』
こんなに揃うん、珍しいなあ。
そんなことを思いながら、朝早く家を出るせーちゃんを見送ったのが記憶に新しい。ちょっと時間に余裕があったから二度寝して、そこから気合を入れてヘアメイクをしたっけな。
せーちゃんが可愛いって言ってくれたワンピースに、不器用なりに頑張って巻いた髪の毛。
お母さんも、せーちゃんママパパも、「可愛い」ってたくさん褒めてくれて。ふわふわした気持ちのままドームに入って、席に座って。ちゃんとペンライトが光るかどうか確認して、それから、
『……デビュー、するんや、』
抱き合って喜ぶお母さんたちに揉みくちゃにされて、まだそんなに喋ったこともない他のメンバーの方のご両親たちとも盛り上がって。
ただ呆然と、それでも嬉しさが込み上げてくる中で、幸せそうなせーちゃんの表情が目に入った。
それが見られただけで、何だかもう、胸がいっぱいになるようで。
「A、せーちゃんのとこ行ってくるんやろ？」
『……あー、いや、今日はええかな』
きっと忙しいやろうし、今日くらいはメンバーの皆と噛み締める時間を作った方がいい。
気を遣ったと言えばそれはそうやけど、私としてはごく当たり前のことやった。せーちゃんにとっては長年追いかけ続けた夢が叶ったわけやし、そこに私が顔を出すのもどうなのか……ネガティブではなく、嘘偽りない本心やった。
せーちゃん、泣いてた。そりゃ泣くやろってのは分かるけど、でも、私は彼の泣いているところを見たことがなかったから。感極まって、色んな感情でごちゃ混ぜになって。
そんなせーちゃんを見てたら、私まで泣いてしまいそうやった。
『……今会ったら、泣きすぎて困らせそう』
「何やそんなことかあ。喜ぶと思うけどな〜」
『ママパパは会いに行かへんの？』
「んー……Aちゃんと同じかなあ。あとでゆっくりお祝いさせてもらおって」
『……やんなあ』
きっと皆が色んな気持ちを抱えているんやろうと思ったら、全てが愛おしく感じられた。
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作者名：流星
| 作者ホームページ：https://twitter.com/sst__05
作成日時：2023年5月16日 0時
