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末澤.
『……もやもやする』
「え？」
『やから、何かこう……上手く言われへんけど！』
幼馴染みという関係から、晴れて恋人同士になったわけやけど、昔からAは人と少しズレてるところがあると思う。それはもうずっと感じてたけど。
例えば、Aに彼氏がおった頃。今思えばよく冷静に話聞けてたなとは思うけど、その彼氏と喧嘩したときは相談に乗ったりもした。年上らしく。
大抵は「Aがあまりにも嫉妬しない」「本当に俺のことが好きなのか」という不満を打ち明けられ、AはAで「そんなことないのに」と消化不良を起こしていた。
「A、それって」
『……だってさ！雪歌ちゃんはこんなにいっくんのこと好きやのに、全然分かってないねんもん！』
「…………ん？」
『もやもやする〜……』
Aの元カレたちへ。今なら気持ちが分かるかもしれん。
嫉妬とかそういうのとは少し違うかもしらんけど、Aは俺のドラマが決まったとき、内容がしっかり恋愛ものだと知っても「おめでとう！」と全力で喜んでくれた。それは嬉しかった。
ただ、俺も男やし。相手役の女優さんに嫉妬するAとか、ドラマ見て不安になるAとか……そういうベタなシチュエーションに少しも興味がないわけではなかった。
「なるほどな、そっちに感情移入してるんや」
『え？だってそうやんか。いっくんの気持ちも分かるけど……でも今の雪歌ちゃんを見てあげてほしいねん、分かる？』
「……おー」
結構生々しいラブシーンもあったのに、Aは特に気にすることなく、至って真剣にテレビ画面を見つめるばかりで。
それでも俺は懲りることなく、いつかどこかのシーンで嫉妬してくれるんじゃ……なんてくだらない期待を抱き、最近はAの部屋でドラマを見るのが日課になりつつあった。
「こういうドラマの撮影って、フリちゃうねんで」
『やろうなあ、しっかり触れてるもん。せーちゃんすごいな』
「……緊張すんねんなあ、ほんまに恋人みたいやから」
『うん、見える見える』
Aはへらりと笑って「偉いな〜」なんて俺の頭を撫でてみせる。
あかん、ひょっとしなくても少しも嫉妬されてない。もちろん仕事やから「こんな仕事やめて！」とか泣かれても面倒やけど、ちょっとくらい……なあ？
もしかして、俺が夢見すぎなだけ？
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作者名：流星
| 作者ホームページ：https://twitter.com/sst__05
作成日時：2023年5月16日 0時
