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貴方.
「……なあ、Aはさ、俺と一緒に寝ても何も思わんの？」
『え？』
「いっつも普通にしとるけど、」
片方の手は繋いだまま、もう片方はベッドの上。揺れたはずみで乱れた私の髪を、せーちゃんが丁寧に耳にかけてくれる。
一連の動作が大人っぽく見えて、どうしようもなく鼓動がうるさい。私の影で暗くなったせいか、よく見えないけど……それでもせーちゃんの顔は、いつもより艶っぽく見える。
『せーちゃんには、普通に見えてた？』
「見えてたよ、ずっと」
『……やとしたら、全然私のこと見えてへんよ』
あの日涙が出たのも、全部せーちゃんのせいやのに。それを何も知らないなんて、何だか私がばかみたいやった。
幼馴染み以上になりたいわけじゃないなんて、そんなことを考えておきながら、何も起きない現状にモヤモヤして。年頃の男女がこんな風に一緒にいて、何もないなんて、そんなことある？
誰にも言えなかった本音が爆発しそうで、もうこの際全部言ってしまえなんて、全てが堰を切ったように溢れ出しそうになった。
『せーちゃん、』
「……ん？」
『…………ほんまに、何もせえへんの？』
「は、……え？」
ぽかん、という効果音がぴったりなほど、口を開けてびっくりしたような表情を浮かべるせーちゃん。
私は私で今にも顔から火が出そうなほど恥ずかしいのに、お互いの表情の差に笑いそうになる。多分こういうのって女の子から言うもんちゃうよなあ……恥ずかしいけど、もういいや。
今更気にしてられへん。全部バレたみたいなもんやし。
「……おっまえ、ほんま、覚えとけよ？」
『え？……っわあ！危ない！』
繋いだ手をもう1度優しく引かれて、今度は見事にベッドの上に着地する。
背中越しに感じるふわふわの布団の感触と、瞳に飛び込んでくる眩しい光。目を凝らして状況を理解しようとすれば、さっきまで私の下にいたはずのせーちゃんが、上にいた。
頭、頬、それから首筋。撫でられた感触の後に、じんわりと広がる熱。
「……もう逃がさんけど」
『え、』
「その覚悟で言うたんやもんな？」
『ちょっと、まって、』
「もう待たれへん。散々煽っといて」
徐々に近付いてくるせーちゃんの顔に、慌ててぎゅっと目を瞑る。
心臓はドキドキを通り越してバクバクしてるし、もう手遅れな気がしてきた。柔らかい感触がしたのは数秒経ってからで、触れたのは唇じゃなくて額やったけど。
「A、好きやで」
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作者名：流星
| 作者ホームページ：https://twitter.com/sst__05
作成日時：2023年5月16日 0時
