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貴方.
『……お待たせしました』
末「おー、おかえり。ちゃんと髪乾かした？」
『うん、』
お風呂から上がって、とりあえず無心で髪を乾かして。
ひょっとしたらせーちゃんも気が変わって、もう帰ってるかもしれない！そんな淡い期待を抱いたものの、彼は当たり前のようにソファでスマホをいじっていた。
帰らんのかーい……迎えに来てもらっといて、そんなツッコミはできひんけど。
末「よし、じゃあもう寝んで。眠い」
『……おやすみ？』
末「A自分の部屋で寝とんのやろ？行くで」
『え……！？』
これもまた当たり前のように私の手を引いたせーちゃんは、全くその手の力を緩める気がないらしく……特に逃げる余裕もないまま、私は自分の部屋にたどり着いた。
癖で明かりをつけると、なぜかいつもよりベッドの存在を感じてしまって。朝適当に片付けてしまったせいで乱れた布団を整えると、せーちゃんは欠伸をひとつ。
『ごめんね、眠いのに迎えに来てもらっちゃって』
末「ん？そらA放っとかれへんやろ、普通に」
『……優しいね、ほんと』
末「優しないやろ。A限定なんやから」
「あとは知らん」と呟いたせーちゃんは、最早いつぶりかも分からんけど、普通の顔で私のベッドに潜り込む。
……分かってたよ、そんなん。一緒に寝るとか言ってる時点で客人用の布団やら、別室のベッドを使う気もないくらい。数年前はよく雑魚寝したりしてたし、せーちゃんからしたらそれくらいのことなんかもしらんけど。
末「A、何しとん」
『え、』
末「ほら、はよおいで」
誰のベッドやねん。そう思ったのは思ったけれど、甘くて優しい声色で名前を呼ばれたら、もうなす術もなかった。
布団を広げる彼の隣に潜り込めば、優しく頭を撫でられて、寝かしつけられているのだとすぐに分かった。そもそもせーちゃんは、私と寝るときは必ずお母さんみたいにそばにいてくれた。
きっと私が寂しくないように、何歳になっても親みたいに甘やかそうとしてくれてるんやろう。
『……お邪魔します』
末「A、めっちゃあったかい」
『え、ほんま？』
末「風呂上がりやしな」
さらりと私の髪を撫でつけたせーちゃんは、「シャンプーの匂いする」と目を細めた。
……前言撤回。お母さんはこんなことしやんし、こうも心を乱してきたりなんかしない！
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作者名：流星
| 作者ホームページ：https://twitter.com/sst__05
作成日時：2023年5月16日 0時
