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貴方.
『あ、……せーちゃん、手、』
末「ん？危ないやろ？1人で歩かれへんねやったら」
『ちが、歩ける……』
末「そんな顔真っ赤にして、説得力ないけどな」
甘ったるい声色に、それに負けないくらい優しい表情。
そりゃせーちゃんはずっと優しかったけれど、こんな顔見たことない。ていうか、こんな風に触れられたこともなかった……！お酒のせいで幻覚でも見てるんかな、私。
今にもパンクしそうな頭をフル回転させて、とりあえず家に急ぐことにした。
末「A、鍵」
『へ、あ、……はい、』
末「ん、今日おばさんたちおらへんねやろ？」
『……は！？え、そうやったっけ？』
末「言うてたやん、夫婦水入らずで旅行やねん〜って。いくつなっても仲良しでええな」
『ええ……今日やったん、それ……』
ささっとドアを開けてしまったせーちゃんは、先に私の靴を脱がせると、そのまま慣れた手つきで戸締まりをしてくれた。
色々ありすぎたのもあるけど、旅行なんて今の今まで忘れとった。まあ私ももう大人やし、それくらい大丈夫なんやけど……今の私にとって問題なのは、このシチュエーションや。
幼馴染み……いや、今となっては私の好きな人と2人きり。お酒が入って正常な判断ができない私からしたら、とんでもない時間でしかない。
うっかり口を滑らせたりなんかしたら……！って、もう既に滑らせてるやん！？疑惑やけど……！
末「よし、さっさとシャワー浴びて寝るで」
『……え、あ、おやすみ、』
末「リビングおるから、何かあったら呼んでな」
『…………帰らんの！？』
末「アホか、そんなふらっふらの酔っ払い置いて帰れるわけないやろ！何があるかも分からんのに」
『や、そんな、もう平気やから、』
「ほら！」と顔を上げれば、じっと私を見つめるせーちゃんと目が合って、顔が熱くなる。
お酒のせいじゃない、それだけは断言できるのに。今はどれもせーちゃんをここに留める理由にしかならなくて、心の中で頭を抱えてしまう。
末「とにかく、はよ入ってき？俺明日午後からやから、そこは気にせんといて」
『そういう問題ちゃうもん……』
末「ほら、酔いも醒めるし」
なぜかノリノリのせーちゃんに押されて、抵抗する術もなくバスルームへ。
せーちゃんが待ってると考えたら、いつも通りのお風呂も落ち着かなくて。ドキドキと騒がしい鼓動を落ち着けるためにも、ゆっくりと深呼吸をした。
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作者名：流星
| 作者ホームページ：https://twitter.com/sst__05
作成日時：2023年5月16日 0時
