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貴方.
末「A、気持ち悪くない？ちゃんと水飲んで、言うてる間に着くから」
『……はい、』
末「なに、酔い醒めたん？さっきまでベロベロやったのに」
『なんか、冷静になった……というか』
小島くんはどうやらせーちゃんを呼んだらしく、丁度よく実家にいた彼はあっという間に車で迎えに来てくれた。
今日飲みに行くって連絡するん忘れてた……そんなことを思い出して怖くなったけれど、停車するたびに私の世話を焼いてくれる彼から、怒りのようなものは感じられず。
それどころか、ちょっとだけ嬉しそう……？気のせい？
『……あの、わたし、なんか変なこと言ってた……？』
心の声やったんか、口に出してたのかさえ思い出せなくて、お酒の怖さを思い知る。
もし口に出してたとしたら、とんでもないレベルの暴露をしてしまったような。それどころかポエミーすぎて、自分でも思い出したくないくらい。胸の奥底で必死に蓋をして、何とか押さえ付けなければ。
末「変なことの度合いが分からんけど、例えばどんなん？」
『……恥ずかしいこと？』
末「ふーん、Aにとっては恥ずかしいことやったんや？あれ」
『あれってなに！？』
にやにやと笑っているせーちゃんは、そのまま車を停めると「着いたで」とシートベルトを外した。
いや、着いたとしても私はまだ切り替えられへん……！そう思いながらも車内に居座るわけにもいかず、渋々車から降りる。やけに冷静になった頭で、とりあえずまたちゃんと考える時間を作ろうと決意して、鞄の中から鍵を取り出した。
末「ちゃんと帰れる？」
『うん、もうあとちょっとやし……うわっ、』
せーちゃんの家の駐車場から、私の家まではほんまに徒歩数秒の距離感でしかなくて。1人で帰れないわけもなく……そう思って歩き出したけれど、まだ完全に酔いが醒め切っていなかったからか、足元がぐらりと揺れた。
慌ててバランスを保とうとした私を、せーちゃんが支えてくれる。腰のあたりに触れた手がくすぐったくて、思わず顔が熱くなった。
末「……ふらふらやん、ちゃんと掴まっときや？」
『え、……あ、ちょ、』
末「昔はよく繋いどったよな」
するり、と簡単に繋がれた手と手。
昔はと言っても、当時のような繋ぎ方ではなくて、ゆっくりと指が絡められていく感覚に、心臓がありえないほど高鳴った。
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作者名：流星
| 作者ホームページ：https://twitter.com/sst__05
作成日時：2023年5月16日 0時
