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貴方.
『はい、せーちゃん』
末「ん、ありがと」
サングラスをかけて運転する横顔は、余裕たっぷりで悔しいくらい絵になる。そりゃ昔からかっこよかったしモテてたけど、最近のせーちゃんは、何というか……ファンの皆さんの言葉を借りるとするならば、��爆イケ��やろうか。
適当に買ってきたお菓子を目の前に差し出せば、当たり前のように口を開けてくれる。
一緒に過ごす時間に、余計な言葉はいらない。長年築き上げてきた関係性の全てが現れているようで、正直せーちゃんといると、家族と同じくらい落ち着く。
末「寒ない？」
『うん、大丈夫』
末「俺暑いからこれ持っといて」
『わっ、ぷ』
信号が青に切り替わる前に、羽織っていたパーカーを私に被せてしまった。
確かに少し冷えるなあとは思ってたけど、まさか上着を渡してくれるなんて思っていなかったから、まさかの不意打ちにときめいてしまう。そういうところはやっぱり年上やなあ、なんて。
いくら小柄とは言え、私より背が高いし、もちろん服のサイズだって大きい。思っていたよりもぶかぶかのそれを羽織ると、せーちゃんお気に入りの香水の匂いがする。
末「……なにしてん」
『ん？せーちゃんの匂いやなって』
末「どんなん？」
『甘いな、せーちゃんみたいに』
末「……全然分からんやん」
『なんでやねん』
バニラみたいな香りは、私が纏うには少し大人っぽすぎる気がして。どうしたって近付くことのできない距離を感じるというか、私がまだまだ子供であることに気付かされてしまう。
それでも飽きることなく甘い香りを楽しんでいたら、そんな私を呆れたように見やるせーちゃんが、「A」と私を呼んだ。
『なに？』
末「そういうの、男の前でやったらあかんで」
『……どういうこと？』
末「やから、匂い確かめるとか、そういうやつ。あざといからな」
『あざとい……！？そんなつもりなかってんけど』
末「ないから問題なんやん」
どこか拗ねた子供みたいに唇を尖らせたせーちゃんは、私の額に軽く握った拳を当てた。もちろん、こつんとも音が鳴らないほど優しく。
「危なっかしいわ」と笑う彼に、何とも言えない感情が湧き起こる。
『……あぶなくないし』
末「はいはい」
『もう！せーちゃん！信号青なった！』
末「ちゃんと動いとうやん」
そんな優しい目で見ないで、なんて、変なの。
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作者名：流星
| 作者ホームページ：https://twitter.com/sst__05
作成日時：2023年5月16日 0時
