りとるプリンセス《 Lil かんさい》 (ページ25)

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25. ページ25

貴方.

『……逃げてないもん』

拓「うそつけ！斗亜とか風雅とはよお喋るのに、俺には何も言ってくれへんかったやん」

『琉巧と彪太郎にもそうやったし、』

拓「2人は俺に気遣ってたの！」

ほんまは、多分、何となく不安やった。

拓哉が人気になって、東京に行くことが増えて。あっという間に手の届かない人になってしまうんじゃないかなんて、最早考えるのも烏滸がましいようなことばかり頭に浮かんで、いっぱいになった。

ずっと私の隣におったのになあ、そう思ったら、もう止まらんくて。

拓「A、自立とかせんでいいから」

『……うん、』

拓「ずっと俺のそばにおって？」

『…………うーん』

拓「なんでそこで悩むねん！」

私の両肩に手を置いて、「お願い」なんて眉を下げて笑う。困ったように私の顔を覗き込むものやから、ここまでされて「嫌です」なんて言う理由もなくて。

拓哉がどこか遠くに行ってしまうのが怖くて、それなら先に離れておけば不安や寂しさは紛れるのではないかと思った。言葉にすると何とも浅はかな理由やけど、それが全てで、それだけが私の動機というやつで。

『分かった、ごめん。もうしやん』

拓「約束やで？」

『……ん！』

差し出された小指に、同じようにそれを絡めては、「約束」と繰り返した。それだけのことなのに拓哉は嬉しそうで、何だか私まで同じような笑顔になってしまう。

指切りをしていた手をそのまま包み込んでしまったかと思えば、ぐいっと腕を引かれる。バランスを崩して拓哉の方に倒れ込む私を、当たり前のように支えては、ぎゅっと強く抱き締められた。

優しくて甘い香りがして、ゆっくりと息を吐いた。

『……なにしてんねん』

拓「充電中！」

『そんな、言うて3日くらいやのに』

拓「関係ないやろ、俺がA不足やの」

『なにそれ』

「会いたかった」、「喋りたかった」、「もっとぎゅーってしたかった」なんて、どれもこれも甘すぎて、とてもじゃないけど聞いてられないほど。

恥ずかしくてしにそう。顔から火が出るって、こういうことなんかなあ。

風「……ま、Aが悪いんやし、今日は付き合ってあげや」

『へ、ふうが！？どこ行くん！？』

風「しゃーなし席外してあげるわ」

風雅のよく分からない気遣いもあって、拓哉は数日間の空白を埋めるように……まあもうとにかく、でろでろに甘やかされたことだけは覚えてるかな。