24. ページ24
貴方.
そんなやり取りがありまして、私はそれとなく拓哉から距離をとって生活することにした。風雅は微妙な反応やったけど、まあ物は試しに。
YouTube撮影は無事に終わって、そこから数日間個人仕事で東京へ。次にメンバーと会うのは大阪やなあ、そんなことを思いながら、帰りの新幹線に乗り込んだのが今朝のこと。
風「あ、A」
『風雅！おはよー、元気してた？』
風「言うて3日くらいやろ」
「おはよ」と返してくれた風雅の頭を撫でれば、今日は珍しく受け入れてくれた。何やかんや寂しかったんちゃうの？ほんまに、かわいいやつめ……
レッスン場におったのは風雅だけで、聞くところによると他の皆はコンビニやら何やら思い思いに過ごしているらしい。
『そっかあ、拓哉は？』
風「普通におるけど、……てかA、それいつまでやるん？」
『ん？』
風「自立した大人の女性が〜、ってやつ」
「もう飽きたもんやと思ってたのに」と呟いた風雅に、ここ数日を思い出してみる。
単純に会ってなかったのもあるけど、とりあえず拓哉とはあまり話していない。かと言って誰かと必要以上に絡むわけでもなく……ただ1人で行動できることを確信するために、飽くまで普通に過ごしていた。
だって拓哉は1人で東京で頑張っている。私も頑張らなきゃ。
風「……ま、無理はせん方がいいと思うけど」
『んー、ありがと？』
風「俺は止めたからな」
『……風雅、前と同じこと言うてない？』
風「2度目の忠告や」
「Aなんかより、拓哉の方がめんどくさいんやから」
そう呟いた風雅の目線は私の後ろに送られていて、その言葉の意味を問おうとしたところで、後ろから誰かの腕が伸びてきた。ぎゅっと抱き締められたかと思えば、まるで逃がさないとでも言いたげに、びくともしなくて。
肩に重みを感じて、ふわりと甘い匂いがした。私がよく知る、優しい香り。
拓「……つかまえた！」
『たくや！？』
拓「もお、何で逃げるん……ほんまに、寂しかったんやけど」
『……にげてない』
拓「俺の目見てそれ言える！？」
くるりと体を回転させられたかと思えば、私は拓哉の方を向いていて。
いつも通り羨ましいほど水分を含んだ大きな瞳は、私しか映していない。自分で決めたことなのに、今にも決意が折れそうだった。
拓「A、ちゃんとこっち見て？」
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 846人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：流星
| 作者ホームページ：https://twitter.com/sst__05
作成日時：2023年3月14日 1時
