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貴方.
岡「え、どこぶつけたん?」
『ここらへん?』
岡「……あー、赤くなってる。たんこぶなるかな、」
『わっ』
さらり、と私の前髪をよけた彪太郎は、そのまま私の額を、触れてるか触れていないか分からないほど優しく撫でた。
心配そうに眉を下げて、「痛かったなあ」と小さく呟く。タイプは違うかもしれないけれど、彪太郎と正門くんの優しさや、お兄ちゃんっぽいところは似ている気がした。
岡「Aちゃん、このあと全部動線一緒やろ?」
『ん?うん、せやね』
岡「掴まっててな、足元暗いから」
『……わ、』
すっと差し出された手が、私の手を優しく掬い上げるように掴むと、そのままゆっくりと繋いでくれた。リハ中やからお互いの体温も高くなっていて、じんわりと広がる温もりが心地いい。
暗所恐怖症は隠していたつもりやったけど、多分メンバーにはバレてしまっていた。もちろん拓哉と風雅には知られていたことやし、時間の問題やと思ってたけども。
私にとって守るべき存在である弟たちにバレたのは、何とも……そう思ったものの、こうして気を遣って助けてくれるのは、どうしようもなくありがたくて嬉しい。
『……ふふ、』
岡「ん?どうしたん?」
『こたろーと、手繋いでる〜と思って』
岡「……なに、うれしいん?」
ふにゃっと微笑んだ彪太郎に、「当たり前やろ?」と返せば、目を丸くして驚かれる。そんなにびっくりする……?なんて思ったけれど、そういえばこの子は驚くほど優しい人間やったな。
『嬉しくないわけないやん』
岡「……待って、それは照れるかも」
『え、かわいい』
岡「かわいくない、」
『めちゃくちゃかわいい、世界で1番かも』
岡「……Aちゃん、たまにめんどくさいな」
照れ隠しのためについた悪態でさえも、私からしたら愛おしくてたまらない。
彪太郎は優しくて素直な子やけど、その分私からの愛情やら何やらをすんなりと受け取ってはくれなくて。多分自分宛じゃないとか思ってるんやろうなあ、そんなことないのに。
繋いだ手に力を込めれば、振り解くわけもなくただ同じように握り返してくれる。
これを可愛いと言わずして、何と言うんやろうか。
『ありがとう、彪太郎のおかげで痛いのんどっかいった!』
岡「いえいえ、……一応、保冷剤はもらいに行こな」
『ふふ、うん。もちろん』
せめて今は、もうちょっとだけ。繋いだままにしててね。
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作者名:流星 | 作者ホームページ:https://twitter.com/sst__05
作成日時:2023年3月14日 1時