59. 分け合った温もり ページ9
斗亜.
佐「ごめん、今出て来れる？Aちゃんが大変で」
晶哉から、いつもよりふわふわとした声で電話がかかってきた。Aちゃんの名前が出た時点で気が気じゃなかったし、何があっても飛び出すつもりやったけど……ほんまに焦って、とりあえず上着羽織って、財布とスマホだけ引っ掴んで家を出た。
指定された場所は居酒屋で、すれ違う人たちも皆酔っ払ってるんかな……それくらい慣れへん環境やった。
お店の前に立っていた晶哉は、ほんのり赤い頬をぺちぺちと叩くと、斗亜に気付いたのか手を振ってくれる。反射で手を振り返せば、晶哉の隣にAちゃんがおることに気付いた。
佐「ごめんなあ、遠かったやろ」
斗「そんなん全然……Aちゃん、よな？」
佐「うん、俺らが目離した隙にかなり飲まされてもうてて、それ気付いた大晴くんが帰らしてくれてん。ごめんな、もっとちゃんと見とったら……」
斗「いや、晶哉もふらふらやもん……大丈夫なん？」
斗亜に謝るようなことちゃうしな、そう思って見たことのないほど赤い顔をした晶哉を見上げると、「俺は大丈夫」なんて笑う。やけど、何となくいつもより滑舌が甘いように感じた。
スタッフさんたちと飲んでたらしく、Aぇさんの中で強い方の大晴くんが後は何とかしてくれるらしい。そう話す晶哉も眠そうで、そろそろ限界な気がするけど……
佐「Aちゃん、ずっと笑顔やし、ノリもええから……こういう場で重宝されてまうんやと思う。俺らの課題やわ」
斗「……何となく想像つくわ、頑張ってたんやなあ」
佐「やからあんま怒らんといてあげてな、斗亜」
斗「大丈夫やって、斗亜は怒らんよ。心配はするけど」
佐「複雑よなあ、ごめんな」
晶哉はいつも優しい。今やって、ほとんど寝てしまっているAちゃんを支えるようにして立ってはいるけど、多分斗亜が気にせんように距離は保ってくれてるし。
こんなに優しい同期に嫉妬なんかせえへんよ。そう思ったけど、ここは晶哉の気遣いに甘えることにした。
佐「タクシー呼んだから、家まで送ってあげてくれる？お金はスタッフさんが払ってくれとるから」
斗「分かった、……って、それやと斗亜、Aちゃんのお家入ることにならん！？」
佐「……もう良くない？え？あかんの？」
斗「や、何かとあかんかなって……」
酔っ払ってるくせに、晶哉はにやにや笑いながら「彼氏なんやからええやろ」なんて斗亜の肩を叩いた。
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作者名：流星
| 作者ホームページ：https://twitter.com/sst__05
作成日時：2023年2月8日 0時
