120. ページ20
貴方.
「おめでとう！」
「お疲れ〜！」
そんな言葉と笑顔が飛び交うバックヤードに、廉くんの「よう頑張った！」という声が響いた。彼の視線の先には誠也くんがいて、いや誰に言うてんねん……とか、ちょっとだけそんなことを思って笑ってしまう。
おめでとう、は散々言うたしな。お疲れ様もなんか……私が言うことか？みたいな。こんなときにネガティブ発動せんでええ、けど。
小「ん！ハイターッチ！」
『わっ、……おめでとう！』
佐「Aちゃーん！」
『晶哉！おめでとう！』
リ「A、来てくれてありがとうな」
『当たり前に来ますよ！おめでとうございます！』
末「よし、やっと追いついたからな」
『私なんか烏滸がましいですけど……待ってました！』
何となく、皆とは少し離れた場所でAぇを迎え入れた。
顔を見たら泣いてしまう気がして、自分を客観視する時間が欲しかった。とは言え、こんなにも真っ赤な目をしていたら、ずっと泣いていたことはすぐにバレてしまうんやろう。
晴々とした表情の皆を見ていたら、何だかほんまに幸せで、それが尽きなくて。心の奥底から満たされるような、不思議な充足感やった。
4人の向こう側に、大好きな人の顔が見えた。
見たことがないくらいに晴れやかな表情をしていて、それだけでぐっと胸が詰まる。言いたかった言葉は全て吹っ飛んでしまって、それでもただ、彼の名前ばかりが頭の中を占めていく。
『……あ、』
正「A」
『まさかどく、」
「おめでとう」も「お疲れ様」も、言葉になる前に、涙と一緒にこぼれ落ちていく。
偉そうに聞こえるかもしれないけど、置いて行ってしまったような罪悪感が拭い切れなかった。私ばかりが夢を叶えているような、そんな申し訳なさと、辛さ。ただそんなことを言葉にするのは、それこそ傲慢やと思う。
でも、そんな私の葛藤まで、彼は分かってくれていた。
全てを包み込むその優しさで、ずっとこの日を待ってくれていた。
正「A、待たせてごめんな」
『……ううん、そんなん、ぜんぜん』
正「やっと迎えに来れた」
『うん、……ほんまやあ、』
わんわんと声をあげて泣く私を馬鹿にする人はひとりもいなくて、皆が呆れたように、それでも幸せそうに笑っていた。
『ずっと言いたかってん、……おめでとうって』
願わくば、この幸せがいつまでも続きますように。
続く
お気に入り登録で更新チェックしよう!
←119. 聞きたかった言葉
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1626人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
流星(プロフ) - るるさん» るるさん、コメントありがとうございます！一気読みしてくださったとのこと、とても嬉しいです（ ; ; ）ほんわかとした雰囲気を目指しているので、これからもほっこりとした気持ちになっていただけるよう、頑張ります！ (2023年1月13日 0時) (
レス) id: e764027ef8 (このIDを非表示/違反報告)
るる(プロフ) - 一気読みしてしまいました、とても心暖かくなる作品です。これからも無理されなペースでの更新、楽しみにしています♩ (2022年12月19日 18時) (レス) @page11 id: a0c184baec (このIDを非表示/違反報告)
流星(プロフ) - ぽんさん» ぽんさん、コメントありがとうございます！更新ペースに偏りがありますが、楽しんでいただけると嬉しいです（ ; ; ）これからもよろしくお願いいたします！ (2022年12月16日 1時) (レス) id: cbee6a2da8 (このIDを非表示/違反報告)
ぽん(プロフ) - また沢山してくれたら嬉しいです！久しぶりの更新嬉しかったです (2022年12月6日 1時) (レス) id: fd8b7f8213 (このIDを非表示/違反報告)
流星(プロフ) - 永瀬れみさん» コメントありがとうございます！前回に引き続き、今回もリクエストありがとうございます(^_^)また更新しますので、暫くお待ちくださいね〜！いつもありがとうございます(^_^) (2022年10月25日 0時) (レス) id: e764027ef8 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：流星
| 作者ホームページ：https://twitter.com/sst__05
作成日時：2022年10月3日 1時
