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貴方.
正「は〜……サッパリした、」
『あ、……おかえり』
タオルで髪を拭きながら現れた正門くんは、「ただいま」とそれはそれは優しく笑った。家の中に二人きりなんて、私からしたら非日常でしかなくて……ドキドキが収まることはなく、ただ小さく頷き返すことしかできなかった。
私が座らせてもらっているソファの隣に腰をおろすと、ふわふわのそれが少し揺れる。慣れた手つきでテレビを点けた彼は、「見とって良かったのに」なんて呟いた。
『あ〜……忘れてた、テレビ、』
正「ええ？どういう……」
『……テレビどころちゃうんやもん』
好きな人と二人きりが、明日の朝まで続くんだから……もう本当は既に眠たくてたまらないはずなのに、大人しく眠ることすらできずに、ただ膝を抱えて彼を待っていた。白黒ハッキリつけるなら、多分今日しかない。今日を逃せば、またずるずると変わらない日々を過ごすだけ。
私の言葉で全てを理解したのか、正門くんは「緊張してる？」なんて聞いてくる。そりゃあそうだろう、と思い首を縦に振ると、今度は同じシャンプーの匂いがした。
正「……信じてもらわれへんかもしれんけど、俺もやで」
『え、……絶対嘘や』
正「ほんまほんま。風呂入ってもAが隣におるの、ライブとか舞台以外やとこんな感じやねんな」
『……どんな感じ？』
正「ん〜……ドキドキ、みたいな？」
『へ、……っひゃ、』
気が付けば、彼の顔がすぐ近くにあって。思わず目を逸らすけれど、大人しく逃してくれるわけもなかった。まるで獲物を狙い定めるかのように私を見つめる正門くんに、心臓がどきりと音を立てる。……もうきっと、逃げ場なんてどこにもなかった。
正「なあ、A」
『……は、い』
正「こんな時間に二人きりになって、何もせえへんほど、俺も優しくはないねんけど」
『……』
正「それ分かってて来てくれた？」
何かされることを期待してた、と言うと少し誤解を生むかもしれないけれど、私だってもう良い大人だ。こんな時間に二人きりになることが、どんな意味か……少しくらいは分かっている。
でも、今の私が彼に聞きたいことは、もっと違うことで。
『……私も、聞きたいことあんねんけど』
正「ん？」
『正門くんの初恋って、……もう、終わっちゃったん？』
勇気を出すなら、今しかない。
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続編です！
動き出せ、初恋 II《 Yoshinori.M 》
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