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貴方.
『……お邪魔しまぁす、』
正「はーい、いらっしゃい」
『わ、ほんまに誰もおらんのや……』
正「おん、やから気にせんと寛いでな」
突然のお泊まりに対応できるほど準備万端じゃなかったため、途中でコンビニに寄って、必要最低限のものを購入した。平然とした顔でカゴヘ缶ビールを放り込む正門くんにはびっくりしたけれど、本当に強いんだなあなんて一人納得する。
とりあえずこれで大丈夫かな……なんて考えていると、あっという間に正門くんのお家へ着いてしまった。実を言うとお邪魔するのは初めてで……実家暮らしってのもあるけど、中々こっちに来ることないから。
正「とりあえずシャワー浴びておいで。服は……俺のトレーナーとかでええ？」
『あ、うん、それはもう……何でも大丈夫です、』
正「分かった、洗面所に置いとくな」
「いってらっしゃい」と私の肩を優しく叩いた正門くんに流されるまま、いきなり浴室へ。ちょっと待って、流石に全てが急展開すぎない……？好きな人のお家で二人きりどころか、お泊まり、そしてシャワー！こんなにポンポン話が進むのなんて、それこそ漫画やドラマだけの話やと思ってた。
若干恥ずかしさを感じながらもシャワーを浴びて、彼の用意してくれた服に身を包む。恐らく数年前にレッスン中の正門くんから感じたことのある、優しくて甘い柔軟剤の香り。緊張がおさまらない私を解してくれるかのような匂いだった。
……さあ、とにかくここからが正念場なわけやけど。一体全体どうなってしまうんやろか。私が勇気を出さなければ何も変わらないのはもちろんだけど、既に色々起こりすぎていてよく分からない。
まず確認しなきゃいけないのは、正門くんの初恋問題について。なあなあになって終わったけれど、多分そこを掘り下げるのが一番大切だ。
『正門くん、』
正「上がった？……よし、俺も軽く浴びてこよ」
『いってらっしゃい、』
正「ん、適当に待っといてな」
ぽん、と私の頭に手を置くと、「ドライヤーそこの棚に入っとるから」と教えてくれる。彼は私の着ている服に視線を落とすと、心なしかどこか嬉しそうに微笑んだ気がした。私も私で服の袖に顔を寄せると、より強くなる柔軟剤の香りに、もうパンク寸前で。
『……刺激が強すぎる、』
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