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貴方.
正「うん、俺はええよ。実家で申し訳ないけど、今日オカンもオトンもおらんし」
『……え？』
大「ほんま？助かるわ〜。どうせ飲んでるんやろ？フラッフラで実家までの距離帰らすんも良くないなと思ってさ、俺も」
正「こっから近いしな、俺の家やと」
大「やろ？」
『え、ちょ、まっ……』
あれよあれよと話が進み、なぜか私が正門くんのお家に泊めてもらう方向へ。いや、絶対おかしい。何か大ちゃん、またへったくそな演技してる気がするし。ロケが中止になったのは流石に嘘じゃないと思うけど、多分もっと早い時間に決まってたはず。
それをわざわざ遅い時間に伝えて、私が大阪に留まることを狙っていたとしたら……？
大「ま、そういうことやから。正門、うちの姫のこと頼んだで」
正「はいよ、任されました〜。ありがとうな、大吾」
大「ん、今度奢りやからな」
ぷつりと通話が切れて、暗くなった液晶に自分の顔が映る。今の状況が理解できてません、って、あからさまに顔に出てるし……「そろそろ行こか」なんて帰り支度を始める正門くんは、多分私を泊めることに何の疑問も抱いていない。それはそれでどうなの……？
ここに来て断るのもおかしいし、もういっそのこと流されてしまえ、って自分もいる。だからかな、強くは言えないと言うか……断れない、かも。
『……あ、わたし、お手洗いに……』
正「ん、立てる？」
『だいじょうぶ……多分、』
何とか少しでも気持ちを整えたい一心で、とりあえず逃げることにする。
けれど、立ち上がった瞬間に、一気に酔いが回った。ぐらりと重心が傾いて、思わずぎゅっと目を瞑る。次にやって来るであろう痛みを待っていたけれど、そんな私を抱き止めてくれたのは、やっぱり正門くんで。肩を掴まれて、ハッとして顔を上げる。
正「はは、大丈夫ちゃうやん。結構飲んだもんな、歩ける？途中まで送ったろ、」
『う〜……ごめんなさい……』
正「たまにはええよ、そんなAも」
『……そうかなあ』
本当に個室の前まで送ってくれた正門くんは、扉が閉まるギリギリまで「待っとるよ」と手を振ってくれた。熱くてたまらない顔に手の甲を当てると、あまりの冷たさにびっくりする。
『はあ……リップ、リップや。それだけでも、』
もうメイクなんてヨレヨレやし、気にしてる場合ちゃうわ。
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