動き出せ、初恋《 Yoshinori.M 》 (ページ41)

今日:74 hit、昨日:37 hit、合計:246,533 hit

41. ページ41

貴方.

大「何かもう、あれやな。片想いとかそんな域超えてるやん」

『……そう見える？』

大「うん。好きとか通り越して、もう手に負われへんって感じしてるで」

よく映画やドラマなんかで「好きだから別れる」なんて展開を見る度に、そんなん絶対できへんやん……なんて冷めた想いを抱いていた。私だったら何が何でも気持ちを伝えたいし、あわよくばずっと隣にいたいもん。好きなんやからさ。

……とか、一丁前に思ってたくせに。いざ自分がその立場に立つと、案外そうなってしまうもんやねんな。正門くんのお荷物になりたくないなんて、生まれて初めてこんな感情を持った。

大「Aさあ、もうそんなん大好きですって言うてるのと変わらんからな？」

『……大好きやもん、だって』

大「あーはいはい、俺も言い方悪かったな？」

『ちゃうけど、……とにかくもう、好きとか簡単には言われへんくなったから』

「今から会うのも、しんどくて嫌や……」なんて、己のものとは思えないほど弱々しい声だった。完璧に変装していた大ちゃんは、帽子を取りながら、何も言わずに私の数歩先を歩く。表情が見えなくて怖いけれど、怒っているわけではないことはすぐに分かった。

いつでも私たちのことを考えてくれている彼だから、心配してくれているのだろう。きっと。

大「……少なくとも正門は、そんなこと望んでないと思うけどな」

『そうかなあ、……正門くんは優しいから、私が好きって言うたら、何か全部受け入れてくれそうで』

大「怖いんや？」

『うん……突き放したりとか、そんなことしなさそう』

徐々に楽屋へと近付く中で、「同情かな」とポツリ。大ちゃんは何とも言えない顔をして振り返ると、「そんなわけないやろ」と私の頭を撫でる。ぽんぽんと、一定のリズムを刻みながら。

大「Aが物凄く考えて出しかけた答えなんはよく分かったけど、それ聞いた上で俺は反対かな。何もお互いのためにならへんよ、それじゃあ」

『……でも、』

大「Aが幸せを選ばへんかったら、それって正門の幸せになるかもしらん可能性を消してることにならへん？」

『え……？』

大「もしもAとおることが正門の幸せに繋がるんやったら、それをAが諦めたら終わりやろ？」

目を細めて優しい笑みを浮かべた大ちゃんは、「それってめちゃくちゃ寂しいことやない？」と私の顔を覗き込んだ。