動き出せ、初恋《 Yoshinori.M 》 (ページ16)

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貴方.

長「緊張してきた……」

和「大丈夫やって、いつも通りやで」

道「そうですよね……いやでもドキドキする、」

高「……」

ガチガチになっている謙杜とみっちーを励ます大橋くんに、もはや無言状態の高橋くん。ふと視線を横に移すと、流石に流星と大ちゃんも緊張しているように見えた。ステージに立つことというよりかは、お披露目ってところが怖いんやろうなあ……私も同じ気持ち。

……それよりもっと他のことで頭がいっぱいになっているけれど、悟られるわけにはいかない。少なくとも、全公演が無事に終わるまでは。

丈「A？顔色悪ない？緊張してる？」

『……そりゃするよ！丈くんは？してへんの？』

丈「アホ、めちゃくちゃ緊張してるわ」

『でしょ？もうほんまに、心臓口から出そうなくらい緊張してる、』

嘘ではないけれど、そうこうしている間にも大きくなる足の痛みに、背中に汗が滲む。

稽古中に痛めてしまったのか、数日前に足を捻った。幸いにも少し腫れている程度で、ギリギリまで冷やして後は衣装で隠すだけで済んでいる。時間が経っても鈍い痛みは増すばかりで、痛み止めの薬をもらいに行けば良かった……なんて少し後悔しているレベルだ。

大「はい……じゃあ、もう出番なわけやけど。リーダーいける？」

和「おお！任せて！」

丈「大事やで、ここ」

「盛り上げてこ」と大橋くんの背中を強めに叩いた丈くんは、私の肩を抱き寄せて、皆で円陣の形になる。

記念すべき一公演目。大橋くんがほんの少し噛んで微笑ましい雰囲気が流れ出す。今はお試しだとか何やかんや言われているけれど、彼がリーダーである意味はかなりあると思う。一緒にいて安心するし、落ち着くし。

和やかなムードに癒されて、一瞬だけ痛みを忘れたかと思えば、またすぐに重たくなる足。……でも、こんなことで諦めている場合じゃない。これくらいの怪我なら皆してる、絶対。

和「っしゃ、なにわ男子の良さ、皆にアピールしてこや！」

大橋くんの「行くで！」という声に皆で応える。

どんなに痛くても、多分始まればアドレナリンが出てどうにでもなるから……あとは全部表情でカモフラージュするしかない。何があっても笑顔でやり切る、……そんな私のモットーが生まれたのは、この公演からだった。