動き出せ、初恋《 Yoshinori.M 》 (ページ15)

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15. 怪我ページ15

貴方.

「A、大分ええ顔できるようになったやん！その調子やで！」

『ありがとうございます！』

衣装を着て通し稽古をするようになった本番直前、ようやく褒めてもらえるようになった。私たちのためだけに作られたオリジナルの衣装は、とても重みがある。色々な想いを背負ってステージに立つわけやから……もっと気を引き締めて、頑張らないと！

以前の自分からは考えられないほど、明るくて穏やかな気持ちで稽古に臨めている。振付師さんから与えられた休憩時間も、もうすっかり落ち着いて休めるようになった。

小「Aちゃん、それめっちゃ似合いますね」

『え、ほんまに？小島が言うてくれるのって相当ちゃう？』

佐「ほんまに似合ってますよ！正門くんも可愛い可愛い言うてました」

『……えっ』

小「そんな分かりやすいことある？ちょろすぎますって」

最近あまり面と向かって話せていなかったからか、彼の名前を聞いただけで顔が熱くなった。いやまあ、だって……前に会ったとき、よくよく考えればとんでもないことしちゃってたし。当たり前のように抱き締められて、私も当たり前のように抱き締め返していた。

幸せだったけど……いや、幸せって言うのは何かおかしいシチュエーションやったけど。それでもやっぱり、好きな人に触れられるのは、多分素敵なことなんやと思う。圧倒的に経験がなくて分からないけど……

小「俺も褒めてんのに」

『いや、ちゃうちゃう。正門くんと最近話してなかったから、びっくりして……それだけやって、うん、』

小「めちゃめちゃ目泳いでますやん」

佐「正門くん呼んできましょうか？」

『あ、全然大丈夫！話すことないし……』

小「何でそこ弱気になっちゃうんすか」

「グイグイ行かなあかんで」「まっさんモテるからなあ」と、すっかりもんくん呼びが抜けたらしい小島がニヤリと笑った。

モテる……いや、そんなん知ってたけど。あんなに優しくて男らしい人がモテないわけがないでしょ。私が彼のクラスメイトとかでも、絶対好きになってたと思うし……どんな世界線になっても正門くんに片想いしていそうなのは、ちょっと悔しいなあ。

『……私やってモテるもん、』

小「うーわ、ちょっとだるいわ」

嘘やけど……モヤモヤとする心を落ち着かせるためについた嘘を反芻させていると、足首に違和感を覚えた。