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貴方.
『あ……正門くん、おはよぉ』
正「おはよう、Aちゃん」
『今日も早いなあ』
同期とは言え、実際のところ、初めて会った日の記憶はあまりない。それは正門くんも同じやと思う。ガッチガチに緊張していた私は、大ちゃんと話したことしか覚えてなかったし……やっぱり怖かった。お父さんや学校の先生以外だと、年上の男の人と話すことってあんまりなかったから。
事務所に入って、割りとあっという間に時間が過ぎた。大ちゃんは永瀬くんや流星くんとグループを組んで、関西を引っ張る立場になりつつある。私は……何なんやろうなあ。うーん、難しい。
正「Aちゃんこそ、毎日はよ来て自主練してるやん。偉いなあ」
『そう？……ほら、私、女やし。人の倍は頑張らなあかん気がして』
正「……それでも偉いって、しんどないの？」
『しんどい……しんどいんかな。どやろ、分からへん』
こんな形でも芸能界に入って、考え方や話し方は同世代より大人っぽくなったと思う。極たまに関ジュの番組に出演して、先輩や年上の芸人さんと話したり……その成果もあってか、年相応には見られにくくなった。「まだ中学生なん？！」って、毎日言われるレベル。
正門くんもどっちかと言うと大人っぽく見られる人やし、一緒にいて凄く落ち着く。そのせいか、自然と一緒にいることが増えた。
正「まあ、無理したらあかんよ。頼れる人頼りや」
『うん、ありがと。程々にやるな、』
漠然とだけど、私はこの人とずっと一緒におるんやろうなあ、なんて思っていた。大ちゃんや永瀬くんは、きっとこのままどんどん進んでいってしまうやろうし。手が届かない場所まで、一直線にね。
正門くんも、私からしたらギターも上手いし凄い人やけど……何やろ、それでも私を置いていかんとそばにおってくれる気がしてた。何の根拠もなかったのにね。
大「お、おはよー。またAと正門に負けたあ、」
『大ちゃん！おはよ。来る時間だけは負けへんで』
正「おはよう、Aちゃんに勝つには相当早起きせなあかんで」
大「きっついなあ」
本当はもっとピリピリしてないとあかんかったはずやのに、私の毎日はやけに穏やかに過ぎていった。周りに恵まれていたのだと、今はそう思う。
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