1. 邂逅 ページ1
貴方.
『……城田Aです。小学6年生の、12歳です』
こんなに大人数の前で、ましてや男の人だらけ……そんな空間で挨拶なんてしたことがなかったから、緊張とかそんなことも分からなかった。胸の辺りまで伸びた髪は、オーディション直前にお母さんに結ばれた。踊るたびに揺れて、なぜだかちょっとだけ気持ち悪い感覚だったのを覚えている。
どうにかして私をジャニーズに入れたかったと言うお母さんは、半ば無理やり履歴書と写真を事務所に送ったらしい。普通は突っぱねられて終わりなのに、なぜか書類選考を突破。あれよあれよと話が進み、オーディションも終わっていた。
「いいね、Aは今日からアイドルなんだよ。分かった？」
『……アイドル？』
「歌って踊って、周りの人を幸せにするんだ」
「素敵な仕事だと思わない？」
そう言って笑ったおじさんは、私の頭をぽんぽんと撫でた。まだ敬語もまともに使えない私を見て、「初々しくて良いね」とよく褒めてくれた。後に分かったことだけれど、あの人がジャニーさんだった。私がまだ小さい頃は、よく関西にも来ていたらしい。
まさか私が合格するとは思っていなかったと言うお母さんは、それはそれは嬉しそうに笑って、大きく手を振ってくれた。大好きな人が喜んでくれるのは嬉しいことだし、気分も良い。
そのときは、多分、まだ何もよく分かってなかった。男の人しかいない世界に、女一人で飛び込むことの怖さや、難しさを。
「皆に自己紹介しておいで。これから一緒に頑張る仲間たちだよ」
『あ……はい、』
「大丈夫、きっと皆いい子たちだから」
ジャニーさんに背中を押され、私は同期たちの中へ飛び込んだ。
……とは言え、全員と一気に会話をするのは難しい。私のすぐそばにいたのは、大ちゃんや廉くん、正門くん、そしてたいちぇ。今となっては誰と話すのも楽しいけれど、当時は不安でたまらなかった。
そんな私を見兼ねてか、年上の大ちゃんは優しく声をかけてくれたんだっけ。
大「初めまして、Aちゃんやっけ」
『何で名前……』
大「さっき言うてたの聞いててん」
よろしくな、と笑った大ちゃんは、今も昔も私を守ってくれる人だった。
.
城田A
23歳(1998年生まれ)
なにわ男子のメンバー
詳しくはなにわプリンセス
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