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貴方.
正「……言うても初恋くらいはしたことあるやろ、Aも」
『え、なに、恋バナ続けるん……？』
正「たまにはええやん」
時間も随分良い感じで、最終の新幹線に乗るとしても、あと一時間ほど余裕があった。辺りはより静かになってきて、何だかこう、嫌でも二人きりであることを意識してしまうような……余計なことを考えそうになって、慌ててお酒で流し込んだ。
顔色ひとつ変えないで私を見つめる正門くんと、数秒に一回は目を逸らしてしまう私。全てがチグハグで、暴れ出した鼓動が落ち着くことはない。
『そりゃ、……ないことはない、けど』
正「おお、初耳やな。そういう話」
『何も面白いことないで、私の恋バナ』
正「何でよ、多分全ジャニーズ興味あるって」
『それは盛った！』
だから、正門くんなんやってば。
……そんなことは言えるはずもなく、ただ「勘弁してや」と伝えるばかり。もしも口を滑らせてしまったら、もうその初恋が今も継続されていることも言わなきゃいけなくなる。そんなのありえない。大爆死にも程があるだろう。
段々とふわふわしてきて、頬が熱くなる。アルコールが回ってきたんかな……なんて思いつつも、いつもよりは全然平気だから、普通に座って話していられる。
『はい、私はもう話したから次は正門くんやで』
正「ええ、Aそんな何も言うてないやん」
『何言うてんの、初恋の有無自体が初公開やねんから』
正「まあそぉか……え〜、おれ？」
『どんな恋してんのか気になるもん』
じっと私を見つめる正門くんは、「ほんまに言わんと分からん？」なんて真剣な顔をする。いや、具体的な恋バナとかしたことないし……そう思って首を横に振れば、「伝わってないんかあ」と呟いた。さっきから何の話してんのやろ、そう首を傾げれば、正門くんは脱力したように笑った。
正「ヒント、俺も一応関ジュです」
『……うん？知ってるけど、』
正「関ジュの初恋は誰なんやっけ？」
『え、』
数分前の彼の言葉が、頭の中を駆け巡る。
待って、何て言うてたっけ。初恋が云々……そうや。関ジュの初恋は大体Aやったんちゃう？みたいなやつや。正門くんも関ジュってことは、イコール……ん？
『……へ、え』
正「お、……やっと気付いた？」
『ま、……まって、パニック、』
正「ゆっくり理解してくれたらええよ」
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