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貴方.
正「もうこの後東京戻るんやろ？」
『あ、うん。そうやねん、』
正「忙しいなあ……ホテル暮らしは？慣れた？」
『まあまあ寂しいけど、メンバーおるから何とか』
正「皆のこと頼りや、ちゃんと。お姉ちゃんらしくせなあかんことないねんで」
それから、とまるでお母さんみたいに繰り返す正門くんに、思わず笑みが溢れる。さっきまでは泣けて泣けて仕方なかったのに、本当に不思議な人だと思う。正直、顔を見たら泣いてしまいそうな人ランキング第一位だったのにな。
笑い出した私を見て、どこか満足そうな、それでも何となく寂しそうな……複雑な表情を浮かべた正門くんは、「A」と私を呼ぶ。
『……ん？』
正「次会えるん、いつになるんかなあ」
『へ……』
正「ほんまにおめでとうって思ってるし、テレビでAのこと見かけるとさ、めちゃくちゃ嬉しいねん、俺」
『うん、』
正「……やねんけどなあ、どうしたんやろ」
「寂しすぎてどうにかなりそう」
……びっくりした。正門くんのこんな顔、多分初めて見たから。それこそ泣きはしないものの、こんな顔をされたんじゃ、泣いているのと大差ないと思う。どうにか慰めてあげたくて、彼の黒髪を整えるように撫でつけた。「ごめんね」は絶対に違うし、何か適切な言葉をかけられるほど、私は頭が良くないから。
何も言えずにただ頭を撫で続ける私を見て、正門くんはふわりと微笑んだ。その表情があまりにも優しくて、苦しくて。やっぱり何も言わないで正解だったな、と思う。
だってもしも今口を開いたら、言わなくていいことまで言ってしまいそうで。
正「慰めてくれてんの？……優しいなあ」
『今まで私のこと慰めてくれてたん、正門くんやからさ。そのお返し……になるかも分からんけど』
正「ううん、十分なってるよ。ありがとうな、」
『……っわ！』
ぎゅっと真正面から抱き締められて、彼は私の肩に顔を埋める。何だか大型犬みたいでくすぐったいな……なんて思いつつも、内心ドキドキで。控えめに背中に手を伸ばして、私なりに応える。
「離したくないなあ」なんて、そんなこと言われたら期待しちゃうよ……とは言えず、私は今日も何も伝えられなかった。
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