動き出せ、初恋《 Yoshinori.M 》 (ページ37)

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貴方.

やっと目が合ったかと思えば、小島は少しだけ考えるような表情を浮かべる。聞き流せるわけがないのに……そう思いながらも、「分かった」と頷いた。それを確認したからかは分からないけれど、小島はまた手紙に視線を落とす。

小「叶うんやったら、俺はもっとAとバンドやりたかったです。何かあっという間に全部が進んで、やる暇もなかったんやけど」

『……』

小「まっさんとAが、二人でギター弾いてる後ろ姿、もうちょい見ときたかったな。それ見て晶哉と＂ツインギターもええな＂って話したかった。俺の密かな夢でした」

『こじま、』

小「……別に泣かせるつもりはなかったんですよ、湿っぽいの苦手やし。でも今日を逃したら多分一生言われへんくなるから、今日限りです」

皆と個人的に集まってバンドをすることなら、多分いつでもできる。けれど、小島が言っているのは多分そういうことじゃないんだろう。ステージに立って、お客さんの前でバンドを披露する。叶わないこともないと思うけれど……デビュー組とジュニア、明確に線引きがされてしまうと、交わることが難しくなってくる。

誰よりも私のデビューに対して淡白そうに見えていた小島が、そんなことを思っていたなんて……一度溢れると止まらない涙を、必死に指で拭う。

小「まあ、他にも言いたいことは山ほどあるんですけど、尺的にも締めます。A、デビューほんまにおめでとう」

『ありがとう、』

小「Aが夢を叶える姿を見て、皆勇気をもらいました。努力は報われるんやなって、俺まで嬉しくなったし。やから東京でもAらしく頑張ってください」

『……うん、頑張る』

小「でもたまにはこっちに帰ってきて、まっさんの相手したってな。俺には対処しきれへんから、あの人」

『ふふ、……はい』

小「いつかまた、同じステージに立ちましょう。小島健より、」

再び目が合った小島は、今度はもう気のせいとは言えないほど、瞳にいっぱい涙を溜めていた。それを見て余計に涙が止まらなくなる私の頭を、わしゃわしゃとまるで犬にするように豪快に撫でる。

『うう……ありがとう、小島、』

小「……ん、まあ慰めたらんこともないわ」

私の肩を抱く小島なんて、もう見られないだろう。全カットでお願いします、なんて思うけれど、それだと少し惜しい気もした。