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貴方.
正「A！……はあ、まだ起きとったん？俺もう寝ちゃったんかと思ってたわ、」
『ちょっとぼんやりしててんけど……正門くんとは、ちゃんと話したいなと思って』
正「ほんまに？親御さんとは話せた？」
『うん、お母さんとお父さんとは電話して……他の人はまだやねんけど、とりあえず正門くんに、』
正「……うわあ、それはえらい貴重やな」
電話越しでも分かる、彼のにこにことした表情。言ってしまえば、ライバルであるなにわ男子のデビューなんて……素直に喜べなくたっておかしくはない。悔しい、羨ましい……そういう感情に押し潰されそうになることは、私もよく知っていた。
それでも彼は一切そんなことは感じていないのか、爽やかな声で「ほんまにおめでとう」と言ってくれる。
『うん……ありがとう、ほんまに』
正「良かったなあ……俺結構心配しててんで？A泣きもせんし、どういう顔やろ……って思って」
『あ、ちゃうねんそれは！びっくりして……裏行ってしっかり泣いたから』
正「良かった、ちゃんと噛み締める時間もあったんやね」
『……うん、おかげさまで、』
実感が湧いたとき、事務所に入ってから今日この瞬間までが、まるで走馬灯のように頭の中を駆け巡った。結成を知らされてあり得ないほど泣いたあの夜とか、怪我をしながらも乗り越えたお披露目公演とか、それこそAぇさんの結成日とか。
思い返せば私の毎日の全てに正門くんがいて、ここまでそばにいたんじゃ、もう気持ちを誤魔化すのなんて限界だと思った。
『……正門くん。私も早く会いたい、正門くんに』
正「え？」
『直接会って、いっぱい話したいことあるし……そんな日が来るかも分からへんけど、会えるなら、』
正「そんなんいくらでも時間作るよ、Aのためなら」
『……ありがとう』
今度会ったら何を伝えようか、とか、そんなことを考えるだけで頭がいっぱいになった。でも確実に言えるのは、もう二人きりで会えることも格段に減るということ。
正「今度会えたら目一杯お祝いさせてな」
『もちろん、めちゃくちゃ楽しみにしとるね』
正「……改めて、ほんまにおめでとう」
「よくここまで頑張ったな」と、電話越しなのになぜか頭を撫でられたような気がして、思わず泣きそうになる。そんな私を見ている大ちゃんは、ケラケラとおかしそうに笑っていた。
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