87. どこにおっても ページ37
貴方.
『……まじで無理、』
「どうしよ」と漏れた声は、自分でも分かるほど震えていた。
窓から見える外は土砂降りで、どんよりとした灰色の雲は、一定の間隔で光ってはとんでもない音を鳴らす。その度に目をぎゅっと瞑って、自分自身を力の限り抱き締めていた。そうでもしなきゃやってられない……こんな歳にもなって、私は雷が苦手だった。
こういうときってどうするのがええんやろ？……流石に死にはせんことは分ってる。でも怖くて何もできへんし、多分寝ることも無理やから。
とりあえず、とテレビの電源を点けようと立ち上がったものの、いきなりピカッと光った窓に驚いて、その場にしゃがみ込む。
『う〜……こわい……』
じわじわと涙で視界が歪み始めて、頬を滑り落ちた雫が、シャツに染みを作った。今日はもうオールかな……明日も早いのに。
寝られへんことを覚悟してその場に座っていると、着信音が鳴った。必死に手を伸ばしてスマホを掴み取ると、和也くんからかかってきたのだと分かる。藁にもすがる思いで画面をスライドさせると、「A？」なんて聞き慣れた優しい声がした。
『かずやくん、……今どこ？』
和「今な、車乗って帰ってるとこなんよ〜。めっちゃ雷凄いやん？A怖いよな？はよ帰ろ思っててんけど、全然終わらんくて」
『ううん……ありがとぉ、電話かけてきてくれて、』
和「……泣いてる？」
『へ……』
和也くんは笑うわけでもなく、ただ心配そうに「いつもと声ちゃうなと思って」なんて呟いた。電話越しに感じる彼の声は、いつもよりさらに優しくて、甘く感じる。きっと意識はしていないはずだけれど、宥められているようだった。
人間って一度我慢するのをやめると、途端に溢れ出してしまうものなんやろか。ぶわっと止まらなくなる涙のせいで、上手く喋れなくなってしまった。
『……うっ、……ひ、怖くて、……寝られへん、くて』
和「うん、せやなあ。怖いなあ……すぐ帰るから、それまで電話繋いどこな？大丈夫やで、俺おるから」
『う、ん』
和「A、何か赤ちゃんみたいやで？……かわええなあ」
からかうわけでもなく、いつも通りの和也くん。「赤ちゃんなんかじゃない」と言いたいのは山々だったけれど、そんな風に突っ込む元気すらなかった。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1542人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「なにわ男子」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
美雨 - こんばんは(*^^*) 夜分遅くにすみません｡｡｡ 物語読んでいて気が付いたのですが｡｡｡ 53.呑まれるなのここの台詞 高「うーん……もうちょっと待とや。まずマネージャーさんに確認するわ」 これ正しくはもうちょっと待とうやではないんでしょうか？ (2022年8月14日 1時) (
レス) id: 4332e38eb8 (このIDを非表示/違反報告)
流星(プロフ) - 涼杜兄妹さん» コメントありがとうございます！西畑くん大人気ですね〜！これからもどきどきしてもらえるようなお話を目指しますので、どうぞよろしくお願いいたします(^_^) (2022年4月20日 20時) (レス) id: e764027ef8 (このIDを非表示/違反報告)
涼杜兄妹(プロフ) - わぁー！！！大ちゃんの攻めうれしいです！！！これならも大ちゃんに翻弄されちゃうの楽しみにしてます！！！ (2022年4月17日 23時) (レス) @page44 id: a89c13a921 (このIDを非表示/違反報告)
流星(プロフ) - ゆかがやさん» ゆかがやさん、コメントありがとうございます！フラグが立ってしまう可能性のあるお話は厳しいのですが、その二人のもう少し糖度高めなお話が書けるように頑張ります！お応えできず申し訳ないです（ ; ; ）今後ともよろしくお願いいたします！ (2022年4月17日 0時) (レス) id: e764027ef8 (このIDを非表示/違反報告)
流星(プロフ) - ゆうゆさん» そうなんですね！短編の方読ませていただきました(^_^)長尾くんの「耳元で」という回が好きです！またじっくり読ませていただきますね〜！ありがとうございます！お互い頑張りましょうね☺️ (2022年4月17日 0時) (レス) id: e764027ef8 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：流星
| 作者ホームページ：https://twitter.com/sst__05
作成日時：2022年3月16日 2時
