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貴方.
「あ、お兄さんもここの人？お姉さんさ、俺らと遊びに行くとこなんだよね。邪魔しないでくれます？」
椿「……嫌がってるように見えますけど」
『椿くん、』
私の肩を掴んで引っ張った椿くん。勢い余って彼の胸元に飛び込むと、片手で抱き締めるようにして支えてくれる。
椿くんの声はいつもより低くて、怒っているように聞こえて。何となく顔を見れなくて俯いていると、全てを察したかのように頭に手が添えられた。「もう大丈夫」と言われているような気分になって、さらに泣きそうになる。
椿「もう営業時間外だし、うちはそういう店じゃないんで。お引き取り願えますか？」
「ハッキリ嫌とは言われてないけど？」
椿「顔見たら分かるでしょ、……あんまりしつこいと、こっちもそれなりの対応させてもらうことになりますけど」
「ぐれ」と、ぐれくんを呼んだ椿くん。出番を待っていたかのように現れた彼は、いつもの優しい顔じゃなくて……真顔で見下ろすぐれくんに気圧されたのか、二人は逃げるように帰って行った。
ぐ「Aちゃん？大丈夫？怖かったでしょ、すぐ来れなくてごめんね」
『あ、ううん……違うの、私がすぐ助けてって言えれば、』
椿「……」
ぐ「……あ〜、俺、コーヒー淹れてくるよ。二人はゆっくり戻っておいで、」
『え？』
ちらりと椿くんを見やったぐれくんは、ニコッと優しく微笑んで、すぐに店内へと戻って行った。私からは椿くんの表情がよく見えなくて……ただ、何かを考えるように黙り込む様子しか分からなくて、より不安になった。
「ごめんね」も、「ありがとう」も、何となく違う気がして……私が今一番椿くんに伝えたいことは、何かこう、もっと違う言葉で、
『椿くん、』
椿「……もう、ほんとに、あんまり危ないことしないで。お願いだから」
ゆっくりと離れて、やっと見えた椿くんの顔。ほんの少し潤んで見える瞳には、当たり前だけど私しか映っていなかった。……でも、その当たり前が泣けるほど嬉しい。これからもずっと、私のことを見ていてほしいと思った。
だから私は、私が今椿くんに伝えたいことは、
『……好き、』
椿「え？」
『私、椿くんのことが好き。大好きです、』
溢れて止まらない涙が、頬を伝っていく。
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