26. ページ26
貴方.
ス「……何だ！それじゃあもう答えは出てるじゃん、」
『へ？』
ス「Aちゃんが椿くんに言ったことって、全部本当なんだよね？お世辞とかじゃないってことだもんね？」
『それはもちろん！椿くんってああ見えても優しいし、凄くしっかりしてて……可愛いけど、実はかっこいいところもあるし、』
私を助けてくれた椿くんを思い出して、思わず笑顔になる。本当に頼れて尊敬できる、素敵な人だと思う。好きだなあなんて、柄にもなく思うほどには……椿くんは、私の中でとっても大切な人だから。
じんわりと熱が広がる感覚。胸の奥に温もりを感じて、何だか嬉しくなった。
ス「……これ以上何か言うのは野暮だから、もう何も言わないけど」
『うん、？』
ス「Aちゃんが後悔しないように、素直な思いを伝えるべきだよ。このままじゃすれ違いになっちゃう、」
「そんなの寂しいよね」と笑ったスイくん。喧嘩をしたわけではないけれど、このままじゃ椿くんとの間に壁ができてしまうかもしれない。私はいつまでも椿くんのそばにいたいし……これからも変わらず楽しく話していたい。
そう思うのは何でだろう。何で私は椿くんが良いんだろう？
ス「……さあ、明日も早いからね。ゆっくり休んで頑張ろう！」
『あ、うん……！』
ス「お花もありがとう、大切に飾るね」
私の肩をぽんぽんと優しく叩いたスイくんは、「おやすみ」とにっこり微笑んだ。
喉元まで出かかった答えは、あともう少しで形になる気がする。後片付けをしながら、ぼんやりとそんなことを思った。あまりにも抽象的すぎて、具体的な答えに繋がる自信はないけれど……それでも、椿くんにそばにいてほしいって、真正面から伝えるべきだ。
数本だけ残った椿の花の処理を終える。これは明日お店に飾ろうかな……どうせなら、椿くん本人にも見てもらいたい。
『……よし、私も寝よっと』
鹿楓堂で働いていれば、この先もきっと椿くんのそばにいられる。だけど……本当にそれで良いのかな、なんて思う。いつか椿くんに大切な人ができて、それが誰だとしても、私はずっと彼の隣にいられなくなるのかもしれない。
そう思うと胸が痛くて、それがもう全ての答えだと思った。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 199人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「オリジナル」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
