3. ページ3
貴方.
ス「……Aちゃん、やっぱり顔色悪いよ？本当に一人で大丈夫？」
と「本当ですよ。私たちが交互に送って行きますから、」
『いや、そんな……ここから結構遠いし。そんなことしてたら皆が休めなくなるでしょ？』
ぐ「俺は大丈夫だって！元気だし！」
閉店作業も終わり、外はすっかり真っ暗に。……それが良くないのだ。私は昔から暗い場所が苦手で、鹿楓堂から帰宅するこの時間が、とにかく怖かった。いい大人になっても克服できないなんて、この先どうすれば良いのやら……うう。
何とも情けない気持ちを抱きながらも、先へ進むことすらできなくて、立っているためにもぐっと足元に力を込める。
『……ごめんね！本当に大丈夫だから。一旦そこまで歩いてみるから、……何かあったら連絡するね』
ス「そこまで言うなら……だけど、本当に無理はしないで」
『ありがとう、スイさん』
四人に手を振って、半ば早歩きのような形で駆け出す。直前に見えた椿くんの顔は、何だか強張っているように見えたけれど……心配させちゃったかな。そう思うと申し訳なくなってしまう。彼は誰よりも私のトラウマを心配してくれているし。
鹿楓堂から少し離れた場所で、「すみません」と声をかけられる。恐る恐る振り返ると、そこにいたのは男の人で……
『あ……えと、あの、』
「道に迷ってしまって……あの、こちらにはどうやって行けば良いんでしょうか？」
『あ、ま、待ってくださいね……少しだけ』
ふぅ、と息を吐いた。突然のことだったから、驚きで何が何だか……今目の前にいる人は無関係なのに、なぜだかあの日のことがフラッシュバックして、くらりと目眩がした。
大した事件があったわけではないけれど、あの日も今日と同じくらい真っ暗だった。学校から帰る途中に声をかけてきた人は、私の腕を掴んで、そのまま引っ張っていこうとした。恐らく誘拐とか、そっちの方の……幸い、すぐに駆けつけた警察の方のおかげで、今も元気に生きている。生きては、いるけれど。
「大丈夫ですか？凄く顔色が悪いようで……」
『あ、いえ、……そんなことは、』
椿「A！！」
大きな大きな、トラウマが残った私。
それなのに椿くんはいつも、嫌な顔ひとつせず颯爽と助けに来てくれる。彼のそんなところに、私がどれほど救われるか。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 199人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「オリジナル」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
