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貴方.
『……どういう意味だったんだろ、』
白い吐息が舞い上がって、空に吸い込まれていく。もう辺りは真っ暗で、日照時間の短さを感じた。冬だから当然なんだけど……ちょっと寂しく感じる。クローズ作業をしてから外に出ると、いっつもこんな感じだから。今日が終わってしまう、そう思うと切なかったりする。
それはそれとして、椿くんに言われたことが頭から離れなくて困っている。私は鹿楓堂のフローリストだ、そんなことは分かっているつもりだったのに。……そんなに自覚なさそうに見えたかな？
と「……Aさん？どうしましたか？」
『あ、ときたかくん。……何でもないの、お疲れ様』
と「お疲れ様です。どうですか？披露宴の方は」
『うん、順調だよ！あとはもう当日の調整だけ！』
と「それは良かったです。もう明日ですもんね」
『そうなの！早いなあ……』
あれだけ悩んで決めたのに、明日にはもう終わってしまう。幸いにも、プランナーさんはとても頼れる方だし、新郎新婦も良い人たちだった。希望をヒアリングして提案したお花も、全て気に入ってくれた。自分が考えたものを受け入れてもらえるのは、何度経験しても嬉しいことで。
と「……最近お疲れ気味でしたので、終わってから休めるといいですね」
『そうだねぇ……有り難いけど、やっぱりきついな』
と「少し顔色が悪く見えますし、心配です」
『……ほんと？気を付けなきゃだね』
眉を下げて笑ったときたかくんに、「ありがとう」と返す。私の抱えていたブラックボードも、そのまま持って行かれてしまった。本当に優しいんだから……私なんかより、ときたかくんの方が細いし華奢だし。申し訳なく感じながらも、今日だけは甘えることにした。
と「椿くんとは話せていますか？」
『え？』
と「最近二人で一緒にいるところを、あまり見かけなかったので」
『……ときたかくんって本当に周り見てるよね。凄いや、』
と「そんなことありませんよ」
喧嘩したとか、気まずいとか、そんなんじゃないけれど。
ただちょっとだけ、椿くんのことが分からない。強気で毒舌だと思えば、時折見せる不安そうな瞳は、私を捉えて、自信なさげに揺れる。……何なんだろう、ほんとに。
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