愛をかぞえて《 Ryosuke.Y 》

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貴方.



『……へ、忘れ物？』

「うん、ごめん。ちょっとどうしても取りに行けなくて、家まで来てくれると助かるんだけど」

『え……！』

「あ、ごめん！何か予定あった？！」

『いや、そんなの全然ないんだけど！』




私が想像できないほど、毎日を忙しく過ごしている涼介くん。突然電話がかかってきたかと思えば、私の家に忘れ物をしたとのこと。五分ほど家の中を探して出てきたそれは、何の変哲もない眼鏡だったけれど、撮影で使う大切なものらしい。これは大変だ……

とは言え、涼介くんのお家に行くのは初めてだった。合鍵をもらってすぐ、使う機会がやってくるなんて……夢にも思わず。




『……行くのは大丈夫なんだけど、涼介くんのお家だよね？週刊誌の人とかいるんじゃないかって思って』

「あ〜……それはそうなんだけど、一人で入る分には大丈夫だよ。初めてだし」

『そうかな……』

「……大丈夫だよ！忘れ物しといてあれだけど、Aが俺の家に来てくれるのは凄く嬉しいんだから」

『涼介くん……』




「お願いされてくれない？」なんて、子犬のように甘えた声でお願いされたら……！

基本的に涼介くんの全てに弱い私は、「分かりました」なんてすぐに了承してしまった。幸いにも然程距離はないし、電車に乗ればすぐ着く場所ではある。あからさまな変装をすると余計に怪しいからと、マスクくらいで大丈夫というアドバイスももらった。




「俺のマンション、芸能人の人もたくさん住んでるんだよね。その内の一人だと思われるだけだから平気だよ」

『それはそれで荷が重い……』

「ふふ、ごめんって。ありがとうね、ほんとに助かる」

『……涼介くんのためだもん、当たり前だよ』

「ありがとう、」




「そんなAが好きだよ」なんて、信じられないほど甘ったるい声で囁かれた。電話越しの彼の声はいつもより低く感じて、尚更心臓に悪い。声にならない声で返事をすると、涼介くんは楽しそうに笑っていた。

上手いこと辿り着けば、今日も涼介くんに会えるんだ。幸せなことだと思う。無事に送り届けるぞ……！

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