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貴方.
『……も、もしもし、』
「あ、良かった。出なかったらどうしようかと、」
いつもよりちょっとだけテンションが高そうな、明るめな声のトーン。ライブ終わりはアドレナリンが出るとか何とか、少し前に聞いた記憶がある。そういうことか……と一人納得して、頬が緩んだ。
電話越しの涼介くんの声は、普段より低く感じる。直接脳に響いてくる感覚で、少しくすぐったい。
「今さっき一段落ついたんだけど……Aは何してる?」
『あ、そっか、お疲れ様!私はホテルにいるよ』
「ありがと、……佐々木さんは?」
『お仕事って言ってたから、もう事務所に戻ってるかも』
佐々木さんは、他のメンバーへの挨拶も兼ねて楽屋に行ってみないかと提案してくれたけど、メンバーの皆さんに挨拶をする勇気が湧かなかったから、お断りしておいた。勇気というか……何だろう。
私って、涼介くんにとってどんな存在なのかな……とか、考え出したら怖くなってしまったんだと思う。不確かで不明瞭な、名前の付かない関係性に。
「……よし、佐々木さんいないならそっち行っても大丈夫か」
『へ、……ま、待って』
「ん?」
『私なんかのところに来て大丈夫なの……?』
地方公演とは言え、週刊誌に狙われていないとも限らない。それにどこにファンの方がいるかも分からないのに、無闇に出歩かない方がいいと思う。生意気にもそう思ったことをやんわりと伝えると、涼介くんはそんなこと気にも留めていないのか、「うん、まあそうなんだけど」と笑った。
「俺がAに会いたいから行くだけだよ。バレたとしても俺の責任だから」
『……そう、かな』
「うん。……それとも、会いたくない?」
電話越しなのに、私を試すような涼介くんの表情が頭に浮かぶ。会いたくないわけ、ないのに……最近会えていなかったから、少しの期待を抱えて地方までやって来たんだ。彼の方から「会わないか」と言われて、断る理由なんてない。
「そんなわけないよ」と返せば、涼介くんは「良かった」と笑う。通話はそこで終了して、ホテルの所在地や部屋番号などを細かく共有した。彼はすぐにでもこちらへ向かってくれるらしく、私は慌てて化粧品を引っ張り出す。
『……ずるいなあ、』
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ひろ(プロフ) - はじめまして!流星さんの書くお話大方読ませていただいております!全て面白くて大好きなのですが、中でもこのお話が甘くてキュンとして大好きです!沢山いつもありがとうございます(,,> <,,)無理せず体調面などお気をつけてお過ごしくださいね (2023年2月3日 3時) (レス) id: eca626ebab (このIDを非表示/違反報告)
流星(プロフ) - 華名嘉さん» 華名嘉さん、はじめまして!コメントありがとうございます。私の話でキュンキュンしていただけるなんて光栄です( ; ; )お気遣いありがとうございます!これからものんびりなペースだとは思いますが、よろしくお願いいたします! (2022年1月13日 18時) (レス) id: e764027ef8 (このIDを非表示/違反報告)
華名嘉 - はじめまして!読んでいてとてもキュンキュンしています!!!無理せず、更新頑張ってください! (2022年1月8日 11時) (レス) @page28 id: df2eb067ab (このIDを非表示/違反報告)
流星(プロフ) - めもりさん» めもりさん、はじめまして!コメントありがとうございます。やりすぎかな?と不安になるくらい意識して甘く書いていたので、そう言ってもらえると嬉しいです( ; ; )これからもよろしくお願いいたします! (2021年12月8日 0時) (レス) id: e764027ef8 (このIDを非表示/違反報告)
めもり(プロフ) - はじめまして!流星さんの描く山田くんが優しくて甘くてすごく好きです…!更新毎回楽しみにしていますっ! (2021年12月6日 1時) (レス) @page8 id: 1ebe0deea6 (このIDを非表示/違反報告)
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