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貴方.
「……こんなときに聞くのもあれなんだけどさ、」
『ん?』
「気になったから聞いちゃうね」
私を抱き締めながら、ゆったりとしたペースで背中をさすってくれる涼介くん。このまま寝てしまいそうなほど心地いいけど……何が気になるんだろう。私に答えられることなら、ちゃんと答えなきゃな。
「そのままで良いから」と言ってくれる彼に甘えて、涼介くんに全てを委ねることにした。
「Aはさ、彼氏とか、好きな人とか……いなかったの?」
『へ?』
「大学通ってたんでしょ?気になっちゃって」
『あ……なるほど、』
思えば私と涼介くんは、お互いの今についてしか知らない。私はネットを調べれば彼の大体のプロフィールが掴めるけれど、反対に涼介くんはそうもいかないんだろう。佐々木さんに聞いたとしても、分かる情報に限りがある。
でも何でそんなこと……とは思ったけれど、聞いてくれたのだから、それは今気にしないでおこう。
『ちょっと前は、彼氏もいたけど……何かね、私の余裕がなくて』
「……そっか」
『すれ違いってやつだね。年上の人だったんだけど、就職すると忙しくなるでしょ?』
「そうだね、確かに」
「好きな人は?」と私の頭を撫でる涼介くんに、「もうずっといないなあ」なんて独り言のように返す。
失恋したばかりの頃は、それはもう落ち込んだけど。時間というものはとても大きくて、ひたすら泣いていたあのときの気持ちを、今ではもう朧げにしか思い出せなくなっている。悲しいというよりかは、それも含めて自分がいるんだなあという感覚に近い。
「そっか、良かった。好きな人がいるのにこんな生活じゃあな、って思って」
『……涼介くんってほんとに優しいね』
「いや……そんなんじゃないよ、俺」
『いやいや、』
貴方ほど優しい人を、私は知らないから……なんて。冗談でもお世辞でもないくらいに、心の底からそう思っている。それでも涼介くんには伝わっていないらしく、そっと体が離された。
腰の辺りに添えられた手は、私が後ろに倒れないように固定されている。その影響か、彼から目を離せなくて。
「……Aが俺の前からいなくなるんじゃないかって、怖くなっただけだよ」
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ひろ(プロフ) - はじめまして!流星さんの書くお話大方読ませていただいております!全て面白くて大好きなのですが、中でもこのお話が甘くてキュンとして大好きです!沢山いつもありがとうございます(,,> <,,)無理せず体調面などお気をつけてお過ごしくださいね (2023年2月3日 3時) (レス) id: eca626ebab (このIDを非表示/違反報告)
流星(プロフ) - 華名嘉さん» 華名嘉さん、はじめまして!コメントありがとうございます。私の話でキュンキュンしていただけるなんて光栄です( ; ; )お気遣いありがとうございます!これからものんびりなペースだとは思いますが、よろしくお願いいたします! (2022年1月13日 18時) (レス) id: e764027ef8 (このIDを非表示/違反報告)
華名嘉 - はじめまして!読んでいてとてもキュンキュンしています!!!無理せず、更新頑張ってください! (2022年1月8日 11時) (レス) @page28 id: df2eb067ab (このIDを非表示/違反報告)
流星(プロフ) - めもりさん» めもりさん、はじめまして!コメントありがとうございます。やりすぎかな?と不安になるくらい意識して甘く書いていたので、そう言ってもらえると嬉しいです( ; ; )これからもよろしくお願いいたします! (2021年12月8日 0時) (レス) id: e764027ef8 (このIDを非表示/違反報告)
めもり(プロフ) - はじめまして!流星さんの描く山田くんが優しくて甘くてすごく好きです…!更新毎回楽しみにしていますっ! (2021年12月6日 1時) (レス) @page8 id: 1ebe0deea6 (このIDを非表示/違反報告)
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