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貴方.
「……A、あのさ」
『うん、』
「Aからしたら、俺が何言ったって信じられないと思うけど」
「今言いたくて」と、濁すことなくそう言い切る涼介くん。何を言われるんだろうとか、そんなことは通り越してしまうほどに、彼の真っ直ぐな視線からは逃げようがなくて。
……不安だった。私の仕事は、多分私じゃなくても出来る。同じくらいテレビに疎い子は、全国を探せばいくらでもいるだろうし。替えが利く役割というのは、やっぱり脆くて、怖くて。
「どんな始まりでも、俺はAのこと凄く大切に思ってるよ」
『……それは、』
「ほんと、……軽々しく疑似恋愛なんて言ってらんないよなあ」
はあ、と息を吐いた涼介くんは、今度は私のことを真正面から抱き締めた。後頭部に添えられた手は、優しく撫でるように乱れた髪を整える。彼の手に触れられることにも慣れたのは、今後を考えると相当な痛手だと思った。もう涼介くん以上の人など、現れてくれないのだから。
「……好きなんだよ、Aのことが。もうどうしたら良いか分からないくらい、」
『え……それは、』
「これから先も、ずっとそばにいてほしい」
『……涼介くん、あの、』
彼の言う言葉は、どこかふわふわとしている。現実感がなくて、まるで目の前でドラマのワンシーンを見ているようだと思った。
涼介くんはどう見たって主人公だけど、私は所謂ヒロインにはなれないし、二番手にも三番手にも選ばれないような人間。一目でそれが分かるのに、今なぜ彼に抱き締められているのか、
「……A、」
「好きだよ」と、眩しいほどに真っ直ぐに伝えられた気持ち。私がこんなにも卑屈なことが恥ずかしくなるほど、涼介くんはいつだって逃げも隠れもせずに伝えてくれていたと思う。
頬にかかった一束の髪が、そっと耳に掛けられる。そしてそのまま頬まで滑り落ちてきた彼の手が、じわりと熱を持った、気がした。いつもより水分の多い涼介くんの瞳は、私を見つめて、揺れる。
『りょう、……』
すうっと吸い込まれるように近付いて、そしてすぐに離れた。さっき塗りたてだったはずのリップは乾いていて、唇が触れ合う感触がやたらとリアルで。もっと保湿しておけば良かったかなあとか、変に冷静だったと思う。
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ひろ(プロフ) - はじめまして!流星さんの書くお話大方読ませていただいております!全て面白くて大好きなのですが、中でもこのお話が甘くてキュンとして大好きです!沢山いつもありがとうございます(,,> <,,)無理せず体調面などお気をつけてお過ごしくださいね (2023年2月3日 3時) (レス) id: eca626ebab (このIDを非表示/違反報告)
流星(プロフ) - 華名嘉さん» 華名嘉さん、はじめまして!コメントありがとうございます。私の話でキュンキュンしていただけるなんて光栄です( ; ; )お気遣いありがとうございます!これからものんびりなペースだとは思いますが、よろしくお願いいたします! (2022年1月13日 18時) (レス) id: e764027ef8 (このIDを非表示/違反報告)
華名嘉 - はじめまして!読んでいてとてもキュンキュンしています!!!無理せず、更新頑張ってください! (2022年1月8日 11時) (レス) @page28 id: df2eb067ab (このIDを非表示/違反報告)
流星(プロフ) - めもりさん» めもりさん、はじめまして!コメントありがとうございます。やりすぎかな?と不安になるくらい意識して甘く書いていたので、そう言ってもらえると嬉しいです( ; ; )これからもよろしくお願いいたします! (2021年12月8日 0時) (レス) id: e764027ef8 (このIDを非表示/違反報告)
めもり(プロフ) - はじめまして!流星さんの描く山田くんが優しくて甘くてすごく好きです…!更新毎回楽しみにしていますっ! (2021年12月6日 1時) (レス) @page8 id: 1ebe0deea6 (このIDを非表示/違反報告)
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