【男主】ALL LOVE in the WORLDー世界は愛に満ちている。ー《FIRST》

＃38　〃 ページ38

5歳の頃の、曖昧で儚い記憶。



俺たち兄妹を命懸けで守り抜いた
母さんの姿と今の優美の姿が
重なる。


＿＿＿。



「っっ……母さん……っ！」



ねぇ＿＿。



どうして死 んじゃったの？



どうしてどうしてどうして？



残された俺たちは
どうすればいいの？



行き場のない想いだけが
3月の肌寒い風に打たれる
俺の中で。

塵のように積もっていく。



＿＿“母さんの大好きな貴女の歌で

　 みんなを笑顔にしてね？”



＿＿“私の愛する龍誠。”



＿＿“母さんは貴女が大好きよ。”



「……俺はっ、母さんの笑顔が
　 見たくてっ……！

　 歌を歌い始めたのに……」



母さんが死 んじゃったら、
もう俺の歌で母さんを
笑顔にすることは出来ないじゃん。

淡い記憶だけが走馬灯のように
思い出されていく。



やがて、そのやるせない想いは
俺の中で終わりのない＿＿。



“憎しみ”を作り出してしまった。



(全てはあの人が……。
　 あの人さえいなければ……っ)



母さんは死 なずに済んだんだ。



ごめんね、母さん。

俺のちっぽけな心は、
もう歪んでしまったよ。



「守るって、約束したのにな……。」



＿＿優美のこと。



彼女には、こんな俺とは違う
“幸せな人生”を生きてほしい。



人を恨むことなんて
知らないような……。

俺には出来ない。



“普通”としての人生を。

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