【男主】ALL LOVE in the WORLDー世界は愛に満ちている。ー《FIRST》

♯3　〃 ページ3

◆◇SIDE．龍誠◇◆



4年振りに俺の上司であり、
“恩人”でもあるヒロさんと再会した。

クシャッとした笑みと穏やかな
雰囲気は俺の記憶通りで、
あっという間に緊張が解れる。



「で、どうだった？ アメリカでの生活は」



二人揃って革張りの黒い
ソファーに移動し
向かいあって座ったところで
ヒロさんが興味津々というように
尋ねてきた。



「大学での研究やら、
　 音楽留学というのもあって
　 とても充実した毎日でしたよ」

「そうかぁ〜、また龍誠の
　 視野が広がったみたいで
　 良かったよ！ そういえば
　 あの世界一秀才の集まる
　 大学を主席で卒業したらしいね？」

「あ、そんな情報まで……。」

「日本でもかなりニュースに
　 なったからね」



にこやかに告げられた事実に、
思わず苦笑いしてしまう。



「俺より凄い考えや奇想天外な
　 想像力を持った
　 人は沢山いましたよ？
　 自分自身もどうして主席で
　 卒業出来たのか
　 めちゃくちゃ驚きました」

「いやいや。 龍誠の発表した
　 “人工遺伝子理論”、
　 物凄く興味深いものだった
　 らしいじゃないか？
　 もし、既にそれを“発表した”人が
　 居なかったら、凄い発見だった
　 かもれないのにね〜」

「そう……です、ね」

「ん？ 大丈夫か？ すまないな。
　 帰国した直後に呼び出して！
　 今日はもう帰っていいよ」

「いえ！ 全然大丈夫ですよ！」

「遠慮しなくていいの、いいの、
　 相変わらず無理してる身体を
　 少しは労りなさい！」



“お前はたった一人しか居ないんだから。”



ヒロさんのその言葉に、
何だか一気に心も身体も
満たされたような気がした。

本当のところは、時差の関係や
帰国後の準備などもあり
少し疲れがきてたから、
今は素直にヒロさんの優しさに
甘えることにした。

♯4　〃→←♯2　〃

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す