龍神さんと。3

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リップひとつで周囲をざわつかせるオンナ、


AA。






ほんっと、気が抜けない。











「A！」










みんなに聞こえるように


わざと声を張ったりして。





「あ…、小川、おはよ。」





なぁ、その顔、

他の男に見せんなよ。






「お前、鏡みたことあんの？」


「はぁ？！なん、んぶっ」


















可愛いケースのきれい色のリップ。




それを贈る意味を考えても、

ふわふわするの、


おかしくないよね？





恋人繋ぎしたのだって、





勘違いしても、


ってか、





勘違いなんかじゃないよね？









なんて、


意気揚々とぬったリップ。







小川、どう思うかな。



かわいい、とか、言われたりして。







なんて浮かれた私がアホだった。







鏡見たことあんのとか、ひどくない？




何回も見たわ。


なんなら、


ポケットに入れてるミラーで何回も見てるわ。





なのになのに、

そんな事言わなくても！




しかも、


タオルぐいぐい押し付けてくるとか鬼じゃない？！






そんなにしたら、リップ取れちゃうじゃん！








「こんなもんか…」








だって、ひどくない？








「もお！なにすんのよ！

　
　取れちゃうじゃん！リップ！」







慌ててミラーで確認するけど、






きれいにぬれたか念入りにチェックしたリップは


見事に拭い去られていて。





落ちにくいやつなはずなのに、小川め…！






悔しくて、ちょっと涙目になってしまう。





あんたが買ってくれたやつじゃん。


なんなのよ…、













「あのさ。」







ちっか。


顔ちっか！








「それ、つけてるとこ、


　俺以外のやつに見せんなって」







はぅ、何この状況。



みんな見てるんですけど！









「返事」

「…はい…」






「ん。わかればよろしい」









満面の笑みですか。


頭ぽんぽんですか。







なにこれ。







ねぇ、みんなもなんでそんな、


生暖かい目で見てるの？





なんなの？













「なんなのよ〜！！！」












体育館に響いた私の絶叫は、





みんなの大爆笑でかき消されてしまった。

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