スーパースターのきみ

56 ページ7

*





やめて、と懇願するかのように、




その柔らかな手は


俺の手に縋るようにしがみついていて。






その力が、少し、強くなる。







「っ、す、き。」


「ん？」







握りしめる力の強さと、


切なく見上げてくる瞳。






もっと、ずっと、見ていたくて。




聞こえてるくせに、


つい、




意地悪をしてしまう。









首筋より、もう少し先の、鎖骨、



そのもう少し先。



その、柔らかな感触。






ダイレクトに触れるのは、

さすがにまだはばかられるから。




小指の先で、そわり、とくすぐれば、


彼女の体はいとも簡単に跳ねる。






　
その時、手の甲に添えられていた彼女の手が


するりと俺の腕の中に入ってきて。







じりじりと、



腕から胸元、そして首筋へと這う。







彼女の細く柔らかい指の感触に


思わず声が漏れそうになって。







「っ、は、」







快楽の波をやり過ごそうとすれば、




追い打ちをかけるように、


甘ったるい告白が降ってくる。









「す、き、ゆうきくん、が、好き、」









どうにかちゃんと伝えようとする


その必死な表情がまた、



俺の欲をダイレクトに煽るから。








言質を取ったとでも言わんばかりに、


ありったけの甘さを込めて。









「じゃぁ…


Aちゃん、キス、するよ？」








まるで、決定事項を告げるかのように



宣言すれば。







首筋に遠慮がちに添えられていた手が


ぐっと先に進んで、



俺の首の後ろにたどり着く。








指から伝わる熱に。



もう一段近づく、



その甘い甘い吐息に。





視線も意識も奪われて。









「き、す、して、」










言わせたのは俺なのに、




懇願するようなその返事に



便乗するように






唇を奪った。

57→←55

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す