スーパースターのきみ

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車のキーが乗った手とは逆の掌に

ぽんと乗せられたその包みは、





祐希くんが気に入ってるとインタビューで答えていたブランドのもので。







彼の好きそうなシンプルなそれは、





もう一つ



彼の手にも握られていて。








「開けてみて？」








問答無用で促され


考える暇も与えてくれない。







自分の分をさっさと開けてしまった祐希くんは、



もたもたとなかなか開けられない私の手を






ちょんちょんとつついてくる。










「Aちゃん、ぶきっちょさん？笑」



「ち、ちが、この、

　シールをきれいにはがしたくて、」



「わかる。俺も。」








見せられた開封済みのそれは、


私が四苦八苦しているのよりもずっときれいで。




…私、不器用なのかもしれないです…。








ふふふ、


と、嬉しそうな声が聞こえて、




いつの間にか私の分も綺麗にシールがはがされた箱が手渡される。









「一緒に開けよ？」










なんて、


小首をかしげながら微笑みかける石川祐希、




国宝認定待ったなし。









「ん。おそろ。」








イロチだけど、と、



ふにゃりと笑う彼が





まぶしくて。









蓋を開けたそこには、




ロゴの主張も控えめな



シンプルできれいな色のレザーのキーホルダー。








「こっちは、俺の車のキーにつけるね。



　だから、」







ゆらゆらと

彼用のキーホルダーを見せながら、




いつの間にか握りしめていた


何の飾り気もないキーを奪われて。








あっという間に、


手際よくキーホルダーが装着されてしまった。










「はい。外したら、だめだかんね？」










今度は


はにかんだ笑顔を見せてくるから。







どれだけ笑顔のバリエーションもってるんですかと、


手渡されたキーホルダー付きのキーを握りしめながら




心の中で突っ込む。










「これで、いつでも思い出せるでしょ？



　俺も、毎日使うから。」











鼻の奥が、ツンと、痛いけど。









なんとか泣くのは我慢出来てる私、



えらい、






なんて思ってたのに、










「次は、指輪見に行こ？






　…一緒に。」











この人の言葉は




そして




その展開の速さは









私の涙も吹き飛ばす勢いで。









ぽっかりと空いてしまいそうだった


私の心のなかに、






するりと





暖かい風を送り込んでくれるようだった。

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