スーパースターのきみ

スーパースターのきみ ページ11

*






慌ただしく大会の終りを迎え、

そのままの流れでいつも以上の過密スケジュールをこなす。





疲れてはいるものの充実した時間。





ほとんど日本にいない俺にとって

この時間が唯一と言っても過言ではないくらいの、


恩返しの時間。






すべての人に返せはしないかもしれないけど

できる限りのことをしたい。





そんな俺の意向を汲んでくれる事務所に感謝する。













この手の過密スケジュールに慣れてはいるけど、






今日はさすがに…







「つっ…………かれたぁ………」







自宅に戻ってすぐ

ぐったりとソファーに座り込んで、




思わず独り言が漏れた。








ふぅ、と、ため息をひとつ。






そうすれば、


浮かんでくるのはAちゃんのことで。










遠距離は無理と泣いた彼女。






それでも何とかお付き合いすることを受け入れてはくれたけど。




少し強引すぎたかなと思わなくもなくて。








今どうしてるだろうかと


思いを馳せる。








時計を見れば、

連絡するには少し遅い時間。






それでも、







どうしても、









「…声、聞きてぇ…」





なんてつぶやいてしまうくらいには


Aちゃん成分が足りなくて。







寝てるかな。

明日も仕事だよね？

こんな時間に連絡したら困らせちゃうかな。









ってか、そうだ、

さっきマネさんがなんか言ってた…、





『明日はちょっとゆっくりしてもらって…』





…明日、オフじゃん！






いや、完全にはオフじゃないけど。


ちょっと時間あるんじゃん！










会いたい。









降って湧いたかのような希望に、


思わずそんなことを考えるけど。









だっから…、

普通の人にはこんな急な話、


無理なんだって。







｟そんな急に、都合なんてつけられないよ｠







誰かに、


いや、



誰しもに言われた言葉が、






フラッシュバックする。










当たり前の話だ。









彼女たちにも自分の人生があって、


仕事だってそんなすぐに休めるはずもない。










ぽっかり開いた、少しの時間。




焦がれる人に会うこともできない。











生まれて初めての恋は








生まれて初めての絶望も












一緒に連れてきてしまった。

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