94話 ページ44
大貴「A。絶対に話してきてね。」
私服姿の大貴くんは私の手を強く握っていた。
A「いつまで握ってるの。
電車、来ちゃうよ？」
私が笑いながら声をかけても、離そうとはしなかった。
昨日、カフェでお話してからずっとこの調子だった。
大貴「だって、心配なんだもん。」
私は大貴くんに抱きついた。
大貴くんの匂いは、やっぱり落ち着く。
A「大丈夫。ちゃんと話してくるから。」
丁度ホームに電車が入ってきた。
相変わらずの満員でやっぱりダルい…。
A「じゃ、行くね。」
私は電車に乗り、大貴くんの方を見た。
大貴「行ってらっしゃい。」
A「行ってきます。」
まだ不安そうな表情の大貴くんの手を離しあ。
ドアが完璧に閉まり、車体はゆっくりと動き始めた。
A「ごめんね。」
私の口パクで通じたのか。
大貴くんは走って私の乗っている電車を追いかけていた。
もちろん、電車の方が早いし、ホームには人が多いため大貴くんの姿は見えなくなった。
ごめんね、大貴くん。
私には、友達を売ることなんてできないよ。
『ちゃんと話す』ってなっちゃんにじゃないよ。
アイツらにだよ…
今まで、ありがとう。
私は込み上げてくる涙を必死に押さえた。
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作者名：結城奏空 | 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/u.php/hp/zyaniotabosyuu/
作成日時：2018年1月10日 20時
