82話 ページ32
A「大貴くん、痛い…。」
私の声が届かないのか、いくら呼びかけても大貴くんは右腕を掴んだまま歩いていた。
どこに行くのかも分からないし、腕は痛いし。
辛くて仕方なかった。
A「大貴くんっ！」
これ以上歩き続けてたら、色々大変なことになっちゃう。
酷くなる前に、私は大声で大貴くんを呼んだ。
すると、体をビクッとさせ大貴くんは立ち止まり私の方に振り向いた。
大貴「どうした？」
A「腕、痛い。」
私の赤くなった腕を見て、大貴くんはスグに離してくれた。
大貴「あ、ごめん。」
A「んーん、大丈夫。」
大貴くんは深いため息をついた。
私たちの空気は最悪だった。
楽しい、幸せな日になるはずだったのに。
それも全部高木雅也のせい。
注意しなかった私のせい…。
私は目を閉じ、1度深呼吸をした。
そして、右側の道に目を向けた。
ある建物の前に見覚えのある看板が見えた。
A「あ。」
私はスマホを取り出し、カフェのサイトを見た。
そのサイトに載ってる外装の写真と同じ。
A「ねえ、大貴くん！」
私は大貴くんの手を取り走りだした。
大貴「ちょ、どうした？」
カフェの前で立ち止まり、私は大貴くんの方を見た。
大貴くんははてなマークを浮かべていた。
A「ここなの、私が行きたかったカフェ！」
私は自分でもビックリするくらい興奮していた。
そんな私を見てか、大貴くんは突然笑い始めた。
大貴「ヒー、腹いてー。」
うっする涙を浮かべながら笑っていた。
A「そんな笑わなくても。」
大貴「ごめんごめん、入ろっか。」
大貴くんは私の手を優しく握り、手を引いてくれた。
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作者名：結城奏空 | 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/u.php/hp/zyaniotabosyuu/
作成日時：2018年1月10日 20時
