36. ページ36
·
『Aへ
この手紙、お店の匠海っていう俺の友達に託しました。Aの中に、俺はもういなくても最後まで読んでくれると嬉しいです。
まず、謝らせてください。喧嘩した時だけじゃない。その後もずっと。Aのことも考えず、無視していてごめんなさい。
引きずりすぎて、もう何で喧嘩したのか忘れた頃にはAに話しかける、連絡する勇気が必要になってしまいました。
その勇気が、俺にはなかった。
無視されたら、もう俺のこと眼中になかったらって考えたら、すごく怖かった。
そのまま卒業してしまって…たぶん、受験を考えなきゃいけなくなった時らへんに、俺たちもう終わってたんだね。
本当に後悔してます。
Aは、間違いなく今までで1番大好きだったし、1番愛してた。
ずっと一緒にいたいって、本気で思ってた。
手紙でこんなこと言うのも卑怯かもしれないけど、この方法が俺ができる精一杯の勇気です。
たぶん、俺がAの事を忘れる事はないと思う。
Aにとって、最高の彼氏になれたかどうかは分からないけど、小笠原海っていう彼氏がいたんだってくらいには、覚えておいてほしいな。
最後になるけど、本当に俺は後悔してる。
Aを手放すなんて、ほんとバカだよね俺。
A、幸せになってください。
俺なんかより、もっといい男いっぱいいるから。
この手紙も、嫌だったら捨てていいよ。
じゃあね。今までありがとう。
大好きだったよ。
小笠原海』
「……」
涙を堪えるなんて、出来なかった。
私が時々漏らす嗚咽だけが、店内に響く。
「うっ…捨てるわけ、…ない、っ…」
涙が止まらない私の背中を、北村さんはずっとさすってくれていた。
·
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 84人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ましゅまろ
| 作成日時：2020年3月19日 1時
