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「え…?」
『…行くよ』
「え、ちょっ」
何も返事してない私の腕を引っ張って、素早くお会計を済ませ店を出た。
私の方は振り返らないまま、掴む手の力だけがどんどん強くなっていく。
「ちょっと海!離してよ!」
私の声は聞こえてるはずなのに、1度もスピードと力を緩めようとしない。
そのまま連れてこられたのは、私の馴染みのある場所。
覚えのある場所。
忘れるわけがない、記憶の中に居続ける場所。
そこは、海の家だった。
「…ねぇ、なんで…」
『入って』
有無を言わさないその表情は、何を考えてるのか全く読み取れない。
海は昔からそうだった。
たまにいきなり訳分からない行動をとっては私を困らせてきた。
別に私はそうやって海に振り回されるのは嫌いじゃなかったし、むしろ好きだった。
でも今は、私と海だけが良ければいいんじゃない。
海に彼女がいなければ、私にとって好都合すぎる展開だ。
でも現に、海には " 佐野ひなた " がいて、私はただの浮気相手に過ぎない。
私は浮気相手になりたいわけじゃないし、意識的に " 佐野ひなた " を傷つけるようなこと、したいわけじゃない。
だから、少しは " 佐野ひなた " の事を考えなくてはならなかった。
このままだったらただの浮気相手で終わるのは目に見えている。
『なに考えてるの?』
見上げると、玄関の扉と海に挟まれていた。
ダメ。
このままじゃダメなの分かってる。
早く逃げなきゃ、
『…俺の事だけ考えて』
そんな心から思ってない考えは、海からのキスで頭の中から消えていった。
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作者名:ましゅまろ | 作成日時:2020年3月19日 1時