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「え…なに?」
なんか約束してたっけ?
いや、してるわけない。
拓「帰るぞ」
そう言って、私の腕を引っ張って一緒にレッスン室を出た。
拓「小泉、今日こいつのこと借りるー」
レッスン室の奥から小さくさくらの返事が聞こえた。
拓弥くんがそれを言うために止まってる間、ドアのすぐそこにいる海とずっと目が合っていた。
拓「じゃあな海」
『え、あ、うん。じゃあ…』
動揺しているような海の声を背に、私は挨拶する暇もなく引っ張られた。
「ちょ、ちょっとまってよ!」
拓「なに?」
「なにじゃないよ!なんか約束してたっけ?」
拓「いやしてない」
「はぁ?いきなり引っ張られても困るんだけど!」
拓「教えてやろうかなーって思って」
「は?なにを?」
拓「コンテンポラリー」
「……それは…ありがたいけど…え、どこで?」
拓「俺がいつも踊ってるとこ」
電車に乗って30分。
着いたのは、大きなガラスが反射して鏡になっている場所の前だった。
拓「俺、いつも1人でここで踊ってんだ。1人も楽しいけど、たまには誰かと一緒もいいかなって」
拓弥くんは荷物を置くと、音楽プレーヤーを取り出して音楽を流し始めた。
拓「踊ろうよ。一緒に」
流れた曲はアップテンポで、それに合わせて自由に踊る拓弥くん。
この人、いつも無愛想なのにこんなに自由な人だったんだ。
表情も、キラキラしてて楽しそう。
いてもたっても居られなくなって、私も荷物を置いてそれに混ざる。
全く違う振り付けをしてるけど、2人で踊ってるこの空間がとてつもなく楽しかった。
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作者名:ましゅまろ | 作成日時:2020年3月19日 1時