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マフィアの本部である高層建築(ビル)に足を進める。途中、洋子とすれ違った構成員の男は彼女の表情を見て小さく悲鳴を漏らした。
普段は上手く感情のコントロールをし、基本的に笑顔を保っている洋子だが、このときばかりは顔を保つだなんて出来ないほどだったのだろう。

芥川さんを、自身の大切な家族をあんな姿にした例の人虎に強い怒りを抱いていた。また、激しく憎悪もしていた。

まだ顔も知らない未知なる標的。
本来ならば顔や簡単な基本情報だけでなく、標的のよく行く店や時間予定表(タイムスケジュール)など隅々まで調べつくし仕事に移るが、それどころではなかった。

異能を鍛え上げ、自身を鍛え上げ、辛い鍛練を乗り越えあらゆる敵を切り刻んで来た彼だから「きっと今回も大丈夫だろう」となんら心配はしていなかった。けれど、けれど…


この有り様だ。


もう迷いはない。人虎なる者を殺す。
その場には鏡花も居たのだろう。武装探偵社に絆されて光の下に出てしまった愚かな子。
…つまりはマフィアの裏切り者だ。
探偵社に裏切り者が二人。光を浴び、自分もそちら側の"正常者"だと思い込んでいるだけの裏の人間。根が腐っていることに変わりはないのに自分はもう大丈夫だと勘違いしている、なんと滑稽なことか。

今までは首領の命令だろうが実のところ遠慮していた節があった。その"人虎"は芥川さんの獲物だからだ。
あまり乗り気ではなかったが、ようやく決心がついた。

首領は怒るだろうか、約束も守れない私を見切るだろうか。何に使う予定なのかは分からないが、私の異能力(・・・)であれば殺した後でも思うように動かせる。それでは駄目なのだろうか。

…芥川さんは余計なことをするな、と言うだろうか。
でも私は家族をあんな姿にされて許せるほど寛容ではない。否、誰だってそうだろう。

いままで何十何百の命を奪い、非情だの残酷だの言われてきたが、"大切な人"を想う人心はあるのだ。

淡々と武器庫扉の暗号を押し、中へ入っていった。

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紅月(プロフ) - すごい面白いです!(*^^*) 夢主ちゃんが可愛い…← 更新頑張ってください!! (2018年10月9日 18時) (レス) id: c8e9e68a05 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:まして x他1人 | 作者ホームページ:http:/  
作成日時:2018年9月6日 22時

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