なないろ (ページ6)

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ライブが終わったあとはメンバーと食事に出かけた

ツアーは続くから
これからも頑張ろう、と気合い入れして

日をまたぐ前にお開きになった。

「Aは帰るの？」

まだ元気が有り余ってるメンバーと
真奈さんは二次会に行くらしいけど

「うん、今日はともくんと会うから」

私は急いで荷物をまとめた

ツアーの準備が始まって二週間近く

お互いに忙しくてともくんと会うのは久しぶり

早く会いたくて
食事の間もずっと落ち着かなかった。

ひとり店を出て、前の通りで手を上げた

飲み屋街のこの大通り

帰宅時間に被ったせいで空車はなかなか見つからない

やっとのことで停まってドアが開く

５分はかかっちゃったかも。

「待って待ってー！」

乗り込む寸前、そんな呼び声が後ろから聞こえて

振り向いたら隆二さんが走ってくるのが見えた

「隆二さん？」

「帰るんでしょ？」

「はい」

「家まで？」

「そうです」

「じゃあ一緒に乗っていい？」

「私ちょっと急いでて…」

「うん、大丈夫、Aんちからでいいよ。ここタクシー停まんなくない？」

「はい…私、5分もかかりましたよ。やっと停まってくれました」

「あ、横取りなんて言わないでよ？」

「言いませんー、はい、乗ってください。私本当に急いでるんです」

背中を押して隆二さんをタクシーに乗せたあと
私も隣に座って行き先を告げた

私の家から先に。

ともくんに連絡しようと思って手にしたスマホ

メッセージあり、のバナーがあって

＂ごめん、遅くなる＂

そんなLINEが届いてた。

あーあ、急ぐ必要なかったじゃん

会えなくなったわけじゃないのにがっかり

二次会行けばよかったな…。

「………はぁ」

思わずため息が零れた私の隣で

「………はぁ」

同じように隆二さんも
スマホを見ながらため息をついてた。

「大丈夫ですか？」

「Aこそ、大丈夫？」

目を合わせて２人して苦笑いを浮かべて
次に出た言葉は似たような事

「…ともくん？」

「…サヤさん？」

お互いの、想い人の名前。