新しいきょうだいが増えました (ページ5)

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結論から先に言うならば、血の繋がらない弟との生活は意外にも快適なものだった。お互いが変わらずマイペースにそれぞれの時間を過ごしているし、だからと言って会話が一切ないような気まずい雰囲気もない。
たまに彼の部屋の前を通ると、通話なのか盛り上がっているような声が微かに聞こえてくるから彼は彼で楽しくやっているらしい。

キッチンにあるケトルのスイッチを押す。マグカップにミルクティーの袋を開けてお湯が沸くのを待った。
正直なところ、一人暮らしのための家を探そうなんて考える必要がないくらいに穏やかな日々である。

[お湯沸かしてるよ。カップラーメンとか食べるなら使ってね]

[あ、キッチンにおるん？俺コーラ飲みたい]

[オッケー部屋戻るついでに持って行くね]

[ありがとう姉ちゃん！]

姉ちゃん…。
絵文字などない簡素な文なはずなのに、何故かテンションが高い気がするのは気のせいだろうか。
もしかしたら友達との通話が面白すぎて盛り上がってるのかもしれない。
カチリとお湯が沸いた合図が聞こえて、スマホをポケットに押し込んだ。マグカップにお湯を注いでからスプーン添えて、それから頼まれていたものを、と冷蔵庫を開ける。
入っていたコーラとマグカップを手に自分の部屋へと向かった。
坂田くん(弟)の部屋の前にたどり着けば、中から笑い声が小さく漏れ聞こえる。通話の邪魔になったら申し訳ないので、部屋をノックするだけに留めて応答を待った。

「はーいー？」

「コーラ持ってきたよ」

「え、ほんまに持ってきてくれたん？ありがとう！」

「もしかしてちょっと酔ってる？飲みすぎないようにね」

「Aもコーヒーばっかり飲んだらあかんで〜」

「今日はミルクティーだから大丈夫です〜ありがとね」

お互いにタメ口で話せるくらいには縮まった距離。必要以上に干渉しない今の距離はすごく居心地が良い。
踏み込んで聞かれて困るようなことは何もないけれど、基本的に薄っぺらい人間なので可能であれば知られたくないし、話さないに越したことはないと思っている。

案外上手くやれてるじゃん。

自分の部屋に戻って、ノートパソコンのスイッチを入れる。起動までの間に熱々のミルクティーに口をつけた。