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「し、志麻さ、連絡つきました…!?」

「ああ、うん。坂田、うらたさんの家にいるって」


連絡したのは坂田くん(弟)を介して知り合い、唯一連絡先を知っている志麻さんだった。
いきなり電話したにも関わらず、志麻さんは「は。今外?どこにおるん?行くから動かんで待ってて」と、深夜にも関わらず駆けつけてくれたのだ。


「そ、そうですか、良かった…坂田くん、最低限の物しか持ってないし、全然連絡つかないから、心配して…っ」


居場所の検討がついてほっと安堵したと同時に、張り詰めていた糸が緩んで声が震えた。
心配した、のは勿論だけどそれ以上に。彼を傷つけてしまった事実に、胸が痛くて堪らない。
彼に告げたのは本心だった。
本当に彼との生活は気が楽で、最初の頃あんなに気負ってたのが嘘みたいに楽しくて。許されるのならここに居たいなと思うくらいで。
彼も同じ気持ちでいてくれている自信がなかったから、気遣っているフリをして彼の気持ちを確かめようとしてしまった。

自分を守るために、彼を傷つけてしまったのだ。


「坂田は男やし、うらたさんとこにおるんやったら大丈夫やって。それより、女の子がこんな時間に1人でうろうろしとったら危ないやろ。変なやつに声かけられるかも知れんし。送るからひとまず帰ろな」

「…っ、はい」

「何があったんか知らんけど、そんな泣きそうな顔せんでも大丈夫やって。お互いがお互いのこと大切に思ってるんは伝わってるし」


慰めるような優しい声色に涙が込み上げてきて、顔を伏せて頷くことしかできなかった。
穏やかに過ごせる彼との共同生活。できることなら一緒にいたい、と。迷惑でないならこれからもお世話になりたい、と。そう、あの時に、素直に言えていたら良かったのに。
視線を落とす視界が滲む。

ああ、私、どうしよう。

少しでも声を出せば、更に泣いてしまいそうな気がして何度も首を縦に振ることしかできない。


「今はそれぞれ考える時間が必要なんやろ」


"大丈夫やって、姉弟なんやから"


「ちゃんと落ち着いてから話し合お。一緒におれば、これから喧嘩なんていくらでもあるんやから」


志麻さんは、きっと私が泣いているのにも気づいていて見ないふりしてくれているんだろう。
頭に優しく触れる熱に、今度こそ喉が震えた。


「Aになんかあったら坂田も心配するし。ほら帰るで」


差し出された手は更に私の涙を溢れさせた。

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作者名:こま | 作成日時:2021年10月31日 14時

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